6月12日(火)「巴里の屋根の下」

「巴里の屋根の下」('30・仏)監督・脚本:ルネ・クレ−ル 出演:アルベ−ル・プレジャン/ポ−ラ・イレリ/ガストン・モド−
★ルネ・クレ−ル監督がト−キ−に取り組んだ第1回作品。パリの下町、大道の演歌師アルベ−ルが歌声を響かせ、相棒が譜面を売り歩く。パリの庶民たちのほのぼのとした感情を伝えるクレ−ルの演出も冴え、タイトルと同名のテ−マ曲も効果的に使われている。

◎巴里の家並を映しながらパンして行く情景に被せて、誰でもが知っている歌♪巴里の屋根の下♪がプロロ−グに流れ、演歌師アルベ−ルと職業不詳(ル−マニア人?)のポ−ラとの恋があり、ポ−ラを巡っての街のヤクザ者たちとの闘争があり、友情があり、失恋があって、カメラが引いて映し出す巴里の屋並にまた♪巴里の屋根の下♪が流れて行く…。
クレ−ルに限らず、サイレント時代を経てきた映画作家たちは、映像のモンタ−ジュ技法を職人的に身に付けているために、「音」を得ればそれこそ“鬼に金棒”の自在さを発揮する。この作品の中でも随所にそれが見受けられるが、クレ−ルはそのことを逆手に取って、アルベ−ルと親友ルイの酒場での会話をガラス扉を閉じることで「無音」にして、その会話を観客に想像させるという見事な芸術的反転のシ−ンを創造したのだった。呑気呆亭