6月13日(水)「嘆きの天使」

嘆きの天使」('30・独)監督:ジョゼフ・フォン・スタンバ−グ 出演:エミ−ル・ヤニングス/マレ−ネ・ディ−トリッヒ
★ドイツの小説家ハインリッヒ・マンの「ウインラ−ト教授」の映画化。ハンブルグで高校教師をしているラ−ト教授は、ふとしたきっかけで街のキャバレ−の踊り子ロ−ラ・ロ−ラに出会い、心ひかれる。世間知らずの教授は、教職を捨てロ−ラと結婚。数年後、キャバレ−の一座に交って道化を演ずる教授の無残な姿があった。
スタンバ−グとディ−トリッヒが初めてコンビを組んだ作品で、劇中で披露されるディ−トリッヒの脚線美と主題歌は、妖しげな魅力に満ち、忘れられない。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎'01年生まれのディ−トリッヒはこの年29歳。前半の教授を魅惑するキャバレ−のシ−ンのロ−ラ・ロ−ラは天使の如き健康美を見せる。この美しさには教授ならずともトリコにならずにはいられないだろう。そして5年後、プライドもなにも失った教授は道化として一座の厄介者になり、ロ−ラは以前のやや太めの健康美を失い、ぞっとするような肉体美の悪の天使に変身していたのだった。
エミ−ル・ヤニングス演ずる教授のデカダンスはいっそ潔ささえ感じさせる肉体的な頽落であり下方に向かい、一方ディ−トリッヒ演ずるロ−ラ・ロ−ラのデカダンスは背教的な匂いを感じさせて上方に向かう。スタンバ−グはその両者のベクトルの交錯に一瞬の火花を散らさせてエンドマ−クを打つ。呑気呆亭