6月8日(金)「決闘高田馬場」

「決闘高田馬場(血煙高田馬場)」('37・日活)監督:マキノ正博/稲垣浩/原作・脚本:牧陶三 撮影:三井六三郎/石本秀雄 出演:坂東妻三郎/香川良介/市川百之助/志村喬/原駒子
★講談でおなじみの堀部安兵衛高田馬場18人斬りを、マキノ正博稲垣浩の両監督が共同で撮り上げた痛快この上ないチャンバラ映画。
有名な韋駄天走りのシ−ンは実に20カットも土手を走る安兵衛の姿をすばやいパンで重ね、その実験的ともいえる手法は未だに語り草となっている。また、18人斬りのシ−ンでは撮影中に音楽を流し、ジャズダンスをまねながら殺陣をふりつけたという、これも有名なエピソ−ドが残っている。まさに全編、ミュ−ジカルを観るような軽妙、快活な躍動感にあふれた傑作である。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎韋駄天走りのシ−ンはまさにサイレントの手法が取り入れられており、走るバンツマの20カットのモンタ−ジュによって、あたかも「走る!」「走る!」「走る!」の字幕が入れられているかのような心地良いリズムが形成される。そして、クライマックスの18人斬りのシ−ンは、「雄呂血」の悲壮美ではなく、バンツマの不思議にコミカルなキャラクタ−を生かした立ち回りと、馬場に蝟集した安兵衛の応援団の、まるで現代の野球場かサッカ−場のサポ−タ−たちがやるようなウエ−ブを先取りした波打つ動きが素晴らしいリズムを形成して、スタッフ・キャストの共同により奇跡的な映像を創造してのけたのである。呑気呆亭