6月1日(金)「荒野の決闘(いとしのクレメンタイン)」

荒野の決闘(いとしのクレメンタイン)」('46・米)監督:ジョン・フォ−ド 出演:ヘンリ−・フォンダ/リンダ・ダ−ネル/ヴィクタ−・マチュア/キャシ−・ダウンズ
★ワイアット・ア−プは3人の兄弟を率いて牛を追ってカルフォルニアへ向かっていた。途中、アリゾナ州のある町に寄るが、ちょっとしたすきに末弟を殺され牛を盗まれる。荒野で出会ったクラントンと名のる牛買いを犯人とにらんだワイアットは、復讐のため、その町の保安官となる。そして西部に名だたる飲んだくれの賭博師ドク・ホリディの力を得て、クラントン一家に迫る。そんな折、ドクを追って東部からクレメンタインという名の美しい娘がやってきた。中略
唱歌として世界中で親しまれている歌「いとしのクレメンタイン」が優しく響く、フォ−ドの最高傑作。西部劇の古典であると同時に、メロドラマの古典として後世に残さるべき一編。

◎同じジョン・フォ−ド監督の「駅馬車」と同様に何度見たか記憶にないほど繰り返し観ている映画なのだが、今回あらためて観て感じたのは、この作品の白眉ともいえるシ−ンは日曜日とあって床屋で髭を剃り髪を整えたワイアットが、ドク・ホリディに町を出ろと突き放された傷心のクレメンタインを見出し、どちらからともなく惹かれあって自然に腕を組み、爽やかな朝の空気の中を教会建設のための集いに向かう。向かう先にはまだ屋根も張られていない教会の床の上で町の人々が「スクエア・ダンス」に興じている。このダンスのシ−ンが実に素敵なのだ。ここには米国の開拓民の良き伝統が覗われる。そして、人々の輪が広がってその中心でワイアットとクレメンタイン二人の実に好ましいダンスが軽快な音楽に乗って繰り広げられる。この作品にフォ−ドが「荒野の決闘」などという殺伐とした題名ではなく、「MY DARLING CLEMENTIN」と名付けた所以が腑に落ちるのである。
プロロ−グからエピロ−グまで間然する所がないシ−ンの心地良い流れは、その中に添景としてシュイクスピア役者や酒場のバ−テンダ−やらを配して少しの破たんも見せずにクライマックスに至る。この作品の完成度に匹敵する映画は、ビリ−・ワイルダ−の「アパ−トの鍵貸します」「お熱いのがお好き」そして、我が小津安二郎の「麦秋」など数本を上げられるのみであると、ワタクシは独断するのである。呑気呆亭