11月11日(水)「大誘拐 RAINBOW KIDS」

大誘拐 RAINBOW KIDS」(91・東宝)監督・脚本:岡本喜八 原作:天藤真 撮影:岸本正広 美術:西岡善信/加門良一 音楽:佐藤勝 出演:北林谷栄/緒形拳/風間トオル/内田勝康/西川弘志/神山繁/水野久美/岸部一徳/田村奈巳/樹木希林
★「独立愚連隊」「ジャズ大名」の岡本喜八監督が、3人組の若者に誘拐された老女が、それを逆手に若者たちを手玉にとって事件に関わる人々を翻弄するさまを描いた痛快コメディ。ある夏の日。大富豪の老女が3人の若者グループによって誘拐される。誘拐の報に、老女を生涯最大の恩人と慕う凄腕の警部が捜査に乗り出す。一方、誘拐犯が要求しようとしていた身代金が5千万と知った老女は激昂、百億にしろと言い放ち、3人を従え、自ら身代金強奪の指揮をとり始める……。主演の北林谷栄が快活で人間味あふれる老女を好演、この年の映画賞を総ナメした。<allcinema>

◎これはまず天藤真の原作がスケ−ルが大きくて面白い。その原作の面白さを岡本喜八が存分に生かして映画にしてくれた。作品の成功はキャスティングにあると言われるが、まさにこの作品にはピタリと当てはまる。大富豪の老女の北林谷栄の智略、母親を誘拐されて結束する神山以下の家族。そして辣腕の警部役の緒形拳。それぞれに適役で活躍してくれるのだが、群を抜いて存在感を見せるのは農婦役の樹木希林である。最初の登場が勢い余ってタンスを押し倒す力持ちのギャグで笑わせてくれて、主家の刀自への絶対の信頼感からすべてを呑み込んで見せる腹の据わった女の、ユ−モラスでありながらも強靱な生活者の存在感を画面に刻みつけて見せてくれたのだった。呑気呆亭