11月4日(水)「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」

マイライフ・アズ・ア・ドッグ」('85・スエ−デン)監督・脚本:ラッセ・ハルストレム 原作:レイダル・イェンソン 脚本:レイダル・イェンソン/ブラッセ・ブレンストレム/ペ−ル・ベルイルント 撮影:イェリン・ペルション 音楽:ビョラン・イスフェルト 出演:アントン・グランセリウス/マンフレド・セルネル/アンキ・リデン/レイフ・エリクソン/メリンダ・キンナマン
★主人公のイングマル少年は、兄と病気の母親、愛犬シッカンと暮らしている。父親は、仕事で南洋の海に出かけたままずっと帰ってこない。人工衛星に乗せられて地球最初の宇宙旅行者になったあのライカ犬の運命を思えば、どんな事だってたいしたことはないと考えるのが彼の人生哲学だ。やがて夏になり、母親の病状が悪化。イングマルは一人、田舎に住む叔父の元に預けられることになる。その村の住人は、一風変わった人ばかり。街に置いてきたシッカンのことが気になるものの、男の子のふりをしている女の子・サガとも仲良くなり、毎日を楽しく過ごすイングマルだったが…。
 50年代末のスウェーデンの海辺の小さな町と山間のガラス工場の村を舞台にしたこの映画は、母親の死、愛犬との別れ、また家族はバラバラになってしまうという展開で進みながらも、実にあたたかい視線で描かれている。それはこのハルストレム監督の人間に対する眼差しによるものだろう。悲劇的な要素を交えながらも、主人公の友人や村の人々との出会いを通して、人生そのものをユーモア豊かに、みずみずしい美しさを全編に漲らせて、実に心温まる作品に仕上げている。主人公を演じるA・グランセリウス少年の、何とも言えない不思議な魅力溢れる笑顔が、この作品の持つ“人生”の楽しさ、悲しさをまとめて語っているのも、“温かさ”の大きな要因のひとつだろう。傑作である。<allcinema>

◎好きな女の子から無情にも愛犬の殺戮を知らされたイングマルは、死ぬと分かっている宇宙にライカ犬を打ち上げる無情な人間の世の中に決別して、ニンゲンの言葉を発しない存在(犬)に成り切ってしまおうとする。これまで堪えてきた不条理の数々が遂に彼を狂気に追いやったのだ。そのイングマルを救ったのは村のガラス工場の人々の優しさと、厳寒の池に飛び込んだ変なオジサンを総掛かりで救おうとする村の人々の底抜けの善意であった。呑気呆亭