8月26日(水)「マルチニックの少年」

「マルチニックの少年」('83・仏)監督・脚本:ユ−ザン・パルシ− 原作:ジョゼフ・ゾベル 撮影:ドミニク・シャビュイ 出演:ギャリ−・カドナ/ダ−リン・レジティム/ドゥタ・セック
カリブ海の小島、マルチニック出身の作家ゾベルがまとめた30年代の少年期の物語を、27歳の女性監督が優しいタッチで描く。島の少年を通じ、貧困と矛盾に満ちた生活がそのまま伝わってくる。少年の祖母が何かと才覚のある人で、面白い役まわりを演じている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

カリブ海の小島に生まれた少年が、祖母や村の長老の人生に裏打ちされた智恵で育てられて成長して行くさまが描かれる。祖母ママンティン(ダーリン・レジティム)はやさしいけど、厳しい。人間としての誇りを忘れてはいけないと、いつもジョゼに言いきかせていた。村の長老メドゥーズ(ドゥータ・セック)は、かつてアフリカから奴隷として連れてこられ、黒人解放運動にも参加したことのある気骨のある人物だ。老人はジョゼの友であり父親のような存在だった。そしてジョゼに語る。「万物は創造の秘密に満ちている。自然の摂理に従わなくてはいけない」と。ふたりの先達の導きによって少年は困難を乗り越えてスクスクと成長してゆく。この映画を見ていると若者を育てるのは周囲の人間の尊厳と智恵なのだなと、顧みて忸怩たる思いになったことだった。呑気呆亭