8月6日(木)「櫻の園」

櫻の園」('89・アルゴプロジェクト)監督:中原俊 原作:吉田秋生 脚本:じんのひろあき 撮影:藤沢順一 演奏:熊本マリショパンの主題による変奏曲)出演:中島ひろ子/つみきみほ/白鳥靖代/梶原阿貴/三野輪友紀
★女子高演劇部の人間模様を描いた吉田秋生の原作マンガを基に、「ボクの女に手を出すな」の中原俊が、チェーホフの“桜の園”の開演直前の2時間に凝縮して思春期の少女たちの揺れる心の内面を瑞々しく映像化した珠玉の一篇。桜の咲く季節。私立櫻華学園高校演劇部。創立記念日恒例のチェーホフの“桜の園”上演のある朝、しっかり者の部長・由布子はいきなりパーマをかけてきた。さらに、前日、部員の紀子がタバコを吸って補導されたというニュースに動揺する部員たち……。生徒たちのあまりにも自然な演技と、2,3人の小グループに分かれた生徒たちが思い思いに会話している様を長回しのまま切り取っていく中原監督の演出が冴え渡った。
<allcinema>

吉田秋生の作品は好きで殆ど読んでいるのだが、何故かこの映画の原作は読んでいない。読んでいないことが幸いしたのか、熊本マリの主題を奏でるピアノの音色に乗って紡がれる中原俊の描く世界にとても素直に入り込むことが出来た。或る地方都市の名門女子校の演劇部につどう女の子たちのサナギから蝶に変わらんとする危うい時期、性への憧憬と肉体の変化がそれぞれのスペクトルで変容し絡み合って、まるで曼荼羅のような映像体験を味あわせてくれた。これは名作!である。呑気呆亭