4月29日(水)「ガスパ−・ハウザ−の謎」

「ガスパ−・ハウザ−の謎」('75・独)製作・監督・脚本:ヴェルナ−・ヘルツオ−ク 撮影:ヨルグ・シュミット・ライトワイン/クラウス・ウイボニ− 音楽:パッヘベル出演:ブル−ノ・S/バルタ−・ラ−デンガスト/ギドラット・タヒミック
★19世紀初頭のドイツ、地下室に閉じ込められていた奇妙な若者が見つかる。カスパー・ハウザーと名付けられたその青年は思うように動けず、言葉もろくにしゃべれない。篤志家によって引き取られたカスパーはやがて言葉を覚え、普通の人と同じような生活を送るようになるのだが…。ニュー・ジャーマン・シネマの旗手、「アギーレ/神の怒り」のW・ヘルツォークが、実話を基に手掛けた異色の問題作。この奇異な青年、カスパー・ハウザーとは何なのか--物語はそれを追い、映画はその答えを明かさない。呆気なく最期を迎えるカスパー。その死体を切り刻み、薄く削がれた脳の断面に自分たちとは違う“刻印”を見つける事で納得しようとする人々。このラスト・シーンが物語るのは、自分達と異なる存在を人間は決して受け容れないという事だけだ。そこには人間の残酷さが溢れている。<allcinema>

◎題材の異様さを薄々知っていたので録画しておきながらもつい見損なっていたのだが、今回やっと見ることが出来た。重いテ−マを扱いながらも主演のブル−ノ・S(妙な名だ)という人の持つ奇妙にユ−モラスな個性が、一見悲惨な物語を救っているように思えた。特に前半の言葉を持たずに発見されたガスパ−と土地の素朴な人々との交流の様が面白く、次第にガスパ−が言語を獲得して行くにつれて徐々に世間との摩擦が生じ、遂に余りにも正直に真実の言葉を発するが故に殺されてしまうという逆説が効いていて、言語というモノを考えさせてくれて面白かった。呑気呆亭