4月1日(水)「燃えつきた納屋」

「燃えつきた納屋」('73・仏)監督・脚本:ジャン・シャポ− 脚本:セバスチャン・ル−レ 撮影:サッシャ・ヴィエルニ− 音楽:ジャン=ミシェル・ジャ−ル 出演:シモ−ヌ・シニョレ/アラン・ドロン/ポ−ル・クロ−シェ/ピエ−ル・ルソ−/カトリ−ヌ・アレグレ/ミュウ=ミュウ
★フランスの閉鎖的な片田舎の町オートドーフに一家を成す、“燃えつきた納屋”と呼ばれる大農家の周辺で起きた殺人事件をめぐり、一家を切り盛りする女主人ローズと、その調査をする気鋭の地方判事(A・ドロン)との対立を丹念に描く心理サスペンスの佳作。雪に閉ざされた寒村を、ある種夢幻的に切り取るS・ヴィエルニのカメラと、頼りにならぬ男たちを後目に一家の名誉を守ろうと必死になる女主人シニョレの老練な演技が見ものだ。
<allcinema>

◎フランスの片田舎の町オートドーフは下の町から「高地」と呼ばれていて、下の町の住人とは風習も気質も大いに異なっていると説明される。その高地で酪農を営む大農家を切り盛りする女主人ロ−ズをシモ−ヌ・シニョレが胆力も知力も備えた人物として魅力的に演ずる。しかしその胆知のロ−ズにしても思うに任せないのが家の男たちであった。その息子二人に高地の雪の荒れ地で起きた殺人事件の嫌疑が懸かる。ロ−ズはてっきり息子の一人がやったと思い込み、事件捜査に派遣された地方判事(ドロン)と虚々実々の駆け引きを繰り広げる。それにしてもこのシモ−ヌ・シニョレという女優の瞳はなんという光を発することか。その瞳の前では若輩の地方判事などはどんな力も発揮できるはずはないのだった。と、そこまでは見応えがあったのだが、急転直下、事件が二人組の女の子の犯罪であったというご都合主義の結末となり、高地と低地、判事と胆知の女主人という興味ある対決も竜頭蛇尾に終わってしまった。呑気呆亭