2月3日(火)「好奇心」

「好奇心」('71・仏)監督・脚本:ルイ・マル 脚本:クロ−ド・ネジャ−ル 撮影:リカルド・アロノビッチ 音楽:チャ−リ−・パ−カ− 出演:レア・マッサリ/ブノワ・フェル−/ダニエル・ジュラン/マルク・ビノク−ル
★60年代後半の娯楽色強い作品が不振で、インドで「カルカッタ」などというドキュメンタリーを撮った後、マルが初心に還って撮った思春期映画は、実にあっけらかんと近親相姦を扱ったものだった。本人が、無意識のうちに作り上げた、と言うように、脚本は五日ほどで書かれ撮影期間もごく短かったようだ。たぶんに自伝的な内容のせいだろうか。仏印戦争さなかの54年のパリ、15歳のローランはジャズに夢中な秀才、でも、ママのお休みのキスがなくちゃ眠れない大人こども。そのママは他所に男を作って、毎晩お出かけの模様。ま、あんな退屈なパパじゃ仕様がないか。かえって嫉妬しちゃうのはローランの方。遊び人の兄たちに、女遊びを強要されても、理想の女性の座にママがドンと坐ってるせいか、男になれないし…。ラテン系ってみんなマザコンなんだよな、と思いつつも、ママ役のレア・マッセリ(更にラテンなイタリア系という設定になっている)の、のびやかな存在感と、マルのジャズ的演出も申し分のない楽しさである。<allcinema>

第二次世界大戦後10年、戦禍の記憶もまだ薄れていない中、仏印戦争の影の差すフランスの、中の上流階級の家族模様を、戦勝国アメリカ直輸入のチャ−リ−・パ−カ−のジャズに乗せて描くという、いかにもルイ・マルらしい洒落た映画であった。母と子の近親相姦というきわどいエピソ−ドも、ラストの家族一同の哄笑によって吹き飛ばされたのだった。呑気呆亭