1月13日(火)「白昼の死角」

「白昼の死角」('79・東映)製作:角川春樹 監督:村川透 原作:高木彬光 脚本:神波史男 撮影:仙元誠三 美術:中村州志 音楽:宇崎竜童 出演:夏木勲/島田陽子/竜崎勝/中尾彬/丘みつ子/千葉真一/岸田森/佐藤慶/天知茂/室田日出男/成田三樹夫/長門勇/ガッツ石松/夏樹陽子
★戦後の混乱を背景に、東大出身のエリ−トたちが行った数々の完全犯罪を描くピカレスク・ロマン。善悪の対決を、悪の側から切り取ったところが新鮮だ。特に悪のヒ−ロ−が死なずに海外へ逃亡してしまうというラストは、実に映画的で痛快。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎原作の面白さを十分に活かして映像化してくれたスタッフと俳優さんたちに拍手。特にダマされる側にそれぞれ個性的な俳優を起用したことが、この作品に面白さとリアル感を与えている。原作の太田洋助(千葉)のキャラクタ−を改変して鶴岡七郎(夏木)を助ける凄みのある悪党役にしたことで、展開が締まって痛快な悪漢映画(ハ−ドボイルド)になった。窮地におちいった七郎のために、洋助は平然としてヒト一人を身代わりに焼き殺すという悪辣無類の犯行を行い、その海外逃亡を助けるのだが、二人の神も悪魔も超えた悪漢同士の友情すら感じさせられて、反道徳的な結末(原作とは違う)に文句を付ける気にさせない。密航の船に乗り込んだ七郎のマント姿が格好良く、まるで観客の俗物性に挑むかのように、マントを翻した夏木のアップでエンドマ−クを打った村川透の客気にバンザイ!呑気呆亭