11月20日(木)「バ−ジニア・ウルフなんかこわくない」

「バ−ジニア・ウルフなんかこわくない」('67・米)監督:マイク・ニコルズ 原作:エドワ−ド・アルビ− 脚本:ア−ネスト・レ−マン 撮影:ハスケル・ウェクスラ− 音楽:アレックス・ノ−ス 出演:エリザベス・テイラー/リチャ−ド・バ−トン/ジョ−ジ・シ−ガル/サンディ・デニス
ニューイングランドの大学内に建てられた住宅。そこに住む教授夫妻ジョージとマーサのもとに、若い夫婦がやってくる。マーサが青年をベッドに誘おうとしても、ジョージは文句を言わない。すでに二人の間には、愛のかけらもなかったのだ。そして唯一の絆である、彼らの息子のことが語られたとき…。壊れかけた夫婦の、狂気に彩られた関係を描く。
<allcinema>

◎若い頃映画館で見たときは、罵り合う夫婦に圧倒されて混乱し、結局テイラ−の尻のデカさとおっぱいの豊かさだけが印象に残ったのだった。今回この年(69歳)になって見直してみて、互いの傷を抉りだし傷口に塩を塗りたくるようなマ−サとジョ−ジの延々と続く罵り合いと、その二人の狂気に巻き込まれるニックとハニ−の若夫婦とのやり取りを、最初は辟易する思いで眺めていたのだった。やがて「狂気」の因って来たるモノが「息子」という言葉であることが徐々に明らかになって来て、狂乱の夜が明け、一旦は壊れてしまった絆を危うく繋ぎ直したかと思われる若夫婦がドアを開けて去り、マ−サの肩に手を置いたジョ−ジが「喪われた息子?」、或いは「生まれなかった息子」のことを静かに語りかけ始めて、キャメラが徐々に二人に接近するにつれて突然ある了解が来てふっと涙が吹き上がり、マ−サとジョ−ジの重ねた手の映像がぼやけだし、そのぼやけた映像の向こうに夜明けの薄明の景色が拡がっていたのだった。呑気呆亭