11月5日(水)「逃亡地帯」

「逃亡地帯」('66・米)監督:ア−サ−・ペン 原作:ホ−トン・フ−ト 脚本:リリアン・ヘルマン 撮影:ジョセフ・ラシェル/ロバ−ト・サ−ティス 音楽:ジョン・バリ− 出演:マ−ロン・ブランド/ジェ−ン・フォンダ/ロバ−ト・レッドフォ−ド/ジェ−ムズ・フォックス/アンジ−・ディッキンソン/E・G・マ−シャル/ロバ−ト・デュバル
★ババー・リーブス(ロバート・レッドフォード)が仲間と2人で刑務所を脱走、その後殺人を犯しながら西に向かった。という知らせを受けたのは、ババーの故郷タール市のシェリフ、カルダー(マーロン・ブランド)で、ババー脱獄の噂は町中に広がった。町で権力を握っているのは石油成金のバル・ロジャース(E・G・マーシャル)で息子のジェイク(ジェームス・フォックス)とは、莫大な金を間に対立していた。ジェイクは幼な友達のババーが刑務所に入って間もなく、その肉感的な妻アンナ(ジェーン・フォンダ)と関係を持つようになっていた。人々は町を牛耳っている親子のこうした成り行きを好奇の目で眺めていたが、彼ら自身とてスキャンダルの渦中で生活しているのだった。(goo映画)

◎'62年の「ハッド」で予言的に仄めかされた、母なる大地の胸に穴を穿って黒い燃える水を搾取することによる米国のモラルの崩壊が、4年後のこの作品では現実の物として描かれている。脱獄囚ババ−の犯した罪が明確に描かれておらず、ババ−をレッドフォ−ドが演じているために迫り来る暴力性という点で今一迫力に欠け、彼を待ち受ける街の連中の暴力性の方が徒に強調されることになり、法を守ろうとするカルダ−の必死の努力も何処か空回りの感が否めない。衝撃のラストは'63年に起きた「ケネディ大統領暗殺事件」の犯人と目されたオズワルドを射殺したジャック・ルビ−の犯行を思わせて、米国社会の底流に横たわる「暗殺」という暴力装置を思わせて、暗澹たる思いをブランド演ずる保安官カルダ−とともに共有することになるのだが、さて職を辞したカルダ−は妻と共に新たな職を求めてその南部の狂気の町を後に米国内の何処へ行けば良いのか?ここには後に'69年の「イ−ジ−・ライダ−」で描かれた米国南部の土着の狂気が先駆的に描かれているのだが、さてこの21世紀、石油を掘り尽くして新たにシェ−ルガスを地中から搾取しようと試み始めた北部資本家連中の標榜する新自由主義の狂気を誰が描くことになるのだろうか。呑気呆亭