10月28日(火)「マドモアゼル」

「マドモアゼル」('66・仏)監督:トニ−・リチャ−ドソン 脚本:ジャン・ジュネ/マルグリット・デュラス 撮影:デヴィッド・ワトソン 出演:ジャンヌ・モロ−/エレット・マンニ/ウンベルト・オルシ−ニ/ジェラ−ル・ダリュ−
★異色の作家ジャン・ジュネが、映画のために初めて書いたストーリーを「雨のしのび逢い」のマルグリット・デュラスが脚本、「トム・ジョーンズの華麗な冒険」のトニー・リチャードソンが監督した。
フランス中央部の小さな村にマドモアゼル(J・モロー)と呼ばれる女教師がいた。彼女はオールド・ミスだったが、村民の厚い尊敬を受けていた。その頃、村にイタリア人マヌー(E・マンニ)が息子のブルーノ、友人のアントーニオをつれて出稼ぎに来ていた。マヌーの野性的な魅力が村の女たちの目を惹いたのは言うまでもない。しかし、彼が来てからというもの、村では水門が破られたり、原因不明の火事がおきたりで、村人たちは、よそ者の彼が犯人ではないかときめつけていた。村で災難が起るたびに、半裸でかいがいしく働くマヌー。そんな彼を、マダモアゼルはいつも遠くから見続けていた。マダモアゼル―この神秘な美しさを持つ女の秘密を知る人は誰もいなかった。彼女こそ、すべての災難の犯人だったのだ。(goo映画)

◎さすがにジャン・ジュネの原作。これは欲求不満のオ−ルド・ミスの物語なんぞという見やすいモノではなく、ジェイムズ・G・フレイザ−卿がその著『金枝篇』で文明の光の下に曝した「殺される王・森の王」の習俗を巧みに織り込んだ神話的な物語なのである。マヌーは森に君臨する木樵であり、村の禍福を司る司祭でもある。マドモアゼルはそのことを本能的に知って彼に惹きつけられる。結果的に彼女の行為によって「森の王」は村の住人たちに「畑の中」で殺されるのだが、マヌ−の王権を象徴する頑丈なベルトは息子のブル−ニに引き継がれ「森の王」の復活が仄めかされて物語は一旦幕を下ろすのだった。呑気呆亭