7月23日(水)「冬の猿」

冬の猿」('62・仏)監督:アンリ・ベルヌイユ 原作:アントワ−ヌ・ブロンダン 脚色:フランソワ・ボワイエ 台詞:ミシェル・オ−ディア−ル 撮影:ルイ・バ−ジュ 音楽:ミシェル・マ−ニュ 出演:ジャン・ギャバン/ジャン・ポ−ル・ベルモンド/シュザンヌ・フロン/ガブリエル・ドルシア
★ノルマンディ−地方の寒村を舞台に、人生の冬を迎えた男と若く奔放な男との心のふれあいを、センスのよいユ−モアをまじえ、詩情豊かに描き上げた珠玉の名作。「ヘッドライト」「地下室のメロディ−」など数多くの名画を生んだH・ベルヌイユ監督の最高傑作といわれる作品だが、なぜか日本では永い間公開されないでいた。フランス映画界の大御所J・ギャバンと、当時ヌ−ヴェルバ−グの代表的スタ−として売り出し中だったJ・P・ベルモンドが共演した唯一の作品であることも、フランス映画史上に残る価値を持っている。名手L・パ−ジュの撮影、M・マ−ニュの名曲も絶品。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎「冬の猿」という邦題が謎めいていて、全編の物語の底流に流れる雰囲気を象徴しているようだ。妻と二人で場末のホテルを経営する人生の先が見えてしまった初老の男が、多分若い頃の自分に似ている青年に出会い、若い頃に過ごした中国での記憶を甦らせて、禁酒の誓いを破って青年と共に放埒な一夜を過ごす。同じく鬱屈を抱えた雑貨屋の主人と三人で死蔵していた花火を持ち出して盛大に打ち上げ、恐らく人生最後の無茶となるであろう「事件」を起こして、眠ったような空気に沈む町に一瞬の覚醒をもたらすのだが、翌朝、青年を見送った駅のベンチに沈む初老の男の背は、「冬の猿」のそれのように屈められていたのだった。呑気呆亭