6月5日(木)「突然炎のごとく」

突然炎のごとく」('61・仏)監督・脚本:フランソワ・トリュフォー 原作:アンリ・ピエ−ル・ロシェ 撮影:ラウ−ル・クタ−ル 音楽:ジョルジュ・ドルリュ− 出演:ジャンヌ・モロ−/オスカ−・ウエルナ−/アンリ・セ−ル/マリ−・デュボア
★ルビッチ映画を愛したトリュフォー描く恋愛もまた三角関係が多かったが、後に撮る女2対男1の「恋のエチュード」と並んで、この、一人の女を二人の男が、三人での友情と育みながらも争う本篇がその白眉だろう。奇しくも原作者は同じH・P・ロシェ。トリュフォーは彼の熱烈な愛読者だったのだ。モンパルナスで出会ったジムとジュール。文学青年同士の二人はやがて無二の親友となり、美しい娘カトリーヌと知りあった時も共に彼女に惹かれてしまう。だが熱烈にアタックしたのはジュールであった。彼はカトリーヌと結婚し、祖国に連れ帰る。だが、第一次大戦後、久方ぶりにライン河畔の夫妻の家を訪ねたジムは、ジュールからカトリーヌと一緒になって欲しいと請われるのだが…。ややクラシカルな設定にいささかの懐古趣味も匂わせず、奔放なモローの魅力に引きずられるように躍動するカメラ、音楽…。心からの自由=愛を希求し、謳歌する三人の姿は正直、眩しすぎる。<allcinema>

◎高校生の頃に見てすっかりジャンヌ・モロ−のトリコになって、以来茫々半世紀、改めて見直してみてカトリ−ヌのエキセントリックさにやや辟易する思いをしたことだった。これも、年を取ったということだろうか。ジュ−ルとジム、ジムの率直さに比べるとジュ−ルのひねくれた愛情表現が目に付いて、彼に今少し明るさがあればラストの悲劇も起こらず、二人の男と女の間に「愛=友情」の奇跡的な三角関係が成立・存続したのではなかったか。ラストのカロリ−ヌの行動はジュ−ルに当てつけたものとしか思えなかった。物語の間に挿入された「第一次大戦」の映像は、戦線の兵士たちがまるで地上にうごめく蟹のように編集されていて、この戦争がジュ−ルの心に或る変質をもたらしたことを暗示しているかのようだ。呑気呆亭