5月22日(木)「処女の泉」

「処女の泉」('60・スエ−デン)監督:イングマ−ル・ベルイマン 脚本:ウラ・イサクソン 撮影:スベン・ニクビスト 美術:P・A・ルンドグレン 出演:マックス・フォン・シド−/ビルギッタ・ペテルスン/グンネル・リンドブロム
★中世の北欧伝説「ヴェンデの娘」を女流作家イサクソンが脚色し、ベルイマンが演出にあたった世界的名作。16世紀、スエ−デンの片田舎に住む富豪のひとり娘カリンは、教会に行くため長い道中の旅に出る。だが途中、カリンは3人の無頼漢に犯され殺されてしまう。のちに事実を知ったカリンの父親は敢然と犯人たちに復讐を誓い、それを実行する。娘の死の悲しみとともに復讐の罪の深さにおののく父親。だが変わりはてた娘のそばからは、清らかな泉がこんこんと湧き出ていた・・・。暴行と復讐という絶望的な世界に、宗教に救いを見いだす人間の姿が、簡潔な画面でみごとに表現された秀作。

◎若い頃ア−トシアタ−ギルド(ATG)で見た時には、その映像と異常な物語の展開にすっかり圧倒されてしまったのだが、この年になって見直してみると、一人娘を女中を一人付けただけでその日の内には帰れない旅に出してしまった父親の杜撰さと、自家の富に驕る甘ったれでしかない娘カリン、娘を犯し殺した羊飼いたちを怒りにまかせて殺す仕方の残酷さと、腑に落ちない部分ばかりが目に付いてしまったのだった。呑気呆亭