5月2日(金)「許されざる者」

許されざる者」('59・米)監督:ジョン・ヒュ−ストン 原作:アラン・ルメイ 脚本:ベン・マド− 撮影:フランツ・ブラナ− 音楽:ディミトリ・ティオムキン 出演:バ−ト・ランカスタ−/オ−ドリ・ヘップバ−ン/オ−ディ・マ−フィ/ジョン・サクソン/リリアン・ギッシュ/チャ−ルズ・ビッグフォ−ド/ジョセフ・ワイズマン
★J・ヒューストンの文学趣味が出た風変わりな、彼の最初のウエスタンで、世間的には失敗作の烙印を押されているが、いろいろと解釈の余地のある魅力的な作品だ。テキサスの平原で営む牧場がやっと軌道に乗り始めたザカリー家の長男ベンは、周囲の信望も厚く、いよいよ今迄でも最大規模のキャトル・ドライヴに出ようという矢先、妹レイチェルの出生をめぐっての悪い噂が立ち困惑した。その主はかつては彼の父のパートナーだった老人ケルシー(ワイズマン)。妹が養女であるのは確かだが、カイオワに殺された移民一家の生き残りと、亡父からは聞かされていた。それをケルシーは、彼女はカイオワから奪った娘でやがてその報いがあるだろうと、不気味な予言をし、ベンの仲間たちも怒って老人を吊るし上げるのだが、彼は真相を知るザカリー家の母を冷たい目で見つめるのだった…。そして、一家は孤立し、レイチェル奪還に現われたカイオワたちと死闘を繰り広げることになる。オードリーのインディアン娘も素敵だが、脇役の充実には目を見張り、ことに、インディアンとの混血でベンを助けるポルトガルという役を演じるJ・サクソンが、三頭の馬を乗り継いで(それはスタントだろうが)カイオワの斥候を捕らえる追走シーンなど新鮮で、印象に残る。敵の呪いのダンスに対抗してL・ギッシュの母が荒野でピアノを弾く場面、長い軍刀を腰に下げ馬にまたがるケルシーをまるで幽霊のように描く所など、ヒューストン好みの奇矯なイメージに満ち、篭城する小屋に自ら火を放って応戦するクライマックスも迫力たっぷりの充実作だ。<allcinema>


◎西部劇好きとしては、闘いに備えてベンが弾を手作りしているところなどが嬉しくなってしまうし、ザカリ−一家の使っているライフルが連発でなくいかにも頑丈な作りであることも面白かった。しかし、あれだけの人数のインディアンたちを母と娘を含む4人で撃退することが出来たとは信じられない。確かにザカリ−の家は石造りで頑丈なものだが、それなりに攻めようがあろうと思われるのに、無防備に突撃するだけの攻撃では玉砕することだけが目的ではないかとさえ思われてしまう。総じてインディアンの描き方が類型的で、リリアン・ギッシュの弾くピアノの音色に怒りを発してピアノを攻撃するなど、彼らの野蛮な愚かしさばかりが強調されるのは気持ちの良いものではない。とまあ、そうは言うものの、まだ事件が起こらない穏やかな場面の描写は、庭先でのパ−ティの賑やかな楽しさや、ピアノを弾くギッシュが曲名を聞かれて嬉しそうに“ウオルフガング・アマデウス・モ−ツアルト”という場面の艶やかさといい、オ−ドリ−にキスをされた隣家の息子の“キスしちゃった、キスしちゃった”と有頂天(そのために殺されてしまうのだが)になる素朴さといい、沢山の見所の有る映画でありました。呑気呆亭