3月28日(金)「大いなる西部」

「大いなる西部」('58・米)監督:ウイリアム・ワイラ− 原作:ドナルド・ハミルトン 脚本:ジェ−ムズ・W・ウエッブ/サイ・バ−トレット/ロバ−ト・ワイラ− 撮影:フランツ・プラナ− 音楽:ジェロ−ム・モロス 出演:グレゴリ−・ペック/チャ−ルトン・ヘストン/ジ−ン・シモンズ/キャロル・ベイカ−/バ−ル・アイブス
★巨匠ワイラ−が西部の新しい夜明けを描いた格調高い大型西部劇。マッケイ(ペック)は牧場主の娘パット(ベイカ−)と結婚するため、東部からはるばるテキサスまでやって来る。牧場主テリルは、女教師ジュリ−(シモンズ)が持つ水源地をめぐってヘネシ−(アイブス)と対立。一方、テリル家の牧童頭スティ−ブ(ヘストン)は、パットを秘かに愛していて、東部のヤサ男マッケイをうとましく思っていた。モロスのテ−マ曲にのって荒野を疾走する駅馬車の遠景ショットの幕開けから、最後の壮絶な決闘シ−ンまで、ワイラ−の演出は西部への限りない賛歌にあふれている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎まさに「THE BIG COUNTRY」。その大いなるテキサスの平原をコンパスという文明の利器を手に小憎らしくも迷子にもならず馬を駆る、キザで頑固で見かけによらずタフな東部男をまさにはまり役のペックが演ずる。そんなペック演ずるマッケイに振り回されるパット(ベイカ−)とスティ−ブ(ヘストン)が仕舞いには気の毒になるほどだ。男の誇りを賭けて、大草原を背景に延々と繰り広げられるマッケイとスティ−ブの殴り合いのシ−ンが、いかにも良きアメリカを信じていた時代の映画らしくて好ましい。反目する二人の牧場主がライフルで撃ち合う最後の決闘も、俯瞰する眼差しで描写されるために大らかな叙事性を感じさせてくれて、後味の良い作品になっている。急いで付け加えておかなければならないが、女教師ジュリ−役のジ−ン・シモンズの知的な佇まいが、男たちの争いの血なまぐささを和らげてくれていたことを言っておかなければなるまい。呑気呆亭