3月14日(金)「剣鬼」

「剣鬼」('64・大映)監督:三隅研次 原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 撮影:牧浦地志 出演:市川雷蔵/佐藤慶/姿美千子/島田竜三
★犬の子と言われ馬鹿にされて育った俊足の斑平(市川)が、初老の浪人から居合いを学び、妖剣の使い手として成長する。柴田錬三郎原作による三隅研次の“剣三部作”のうちの一つ。斑平が馬と駆けっこをしてぶっちぎり勝つシ−ンは語りぐさ。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎この作品の見所は同僚から犬の子と蔑まれた斑平(市川)が、逆に犬の子らしく俊足を活かして上役の目にとまり、その上に生得の勘による園芸の技により認められて行く課程の描写にある。ところがその斑平が偶然目撃した初老の浪人の居合の技に瞠目して、その技を会得しようとその浪人に教えを請うあたりから斑平の悲劇が始まってしまう。居合の達人となった斑平は藩の上役(佐藤)から命じられて師であった浪人=隠密を斬り、その後も上役から命じられるままに反体制派の面々を斬り続ける。ラストの自分が斬った藩士たちの遺族との大殺陣は、斑平が育てた花で埋まった渓谷で繰り広げられる。斑平は得意の居合で次々に切付けてくる男たちを倒して行くのだが、それはそれで見応えがあっても、血脂にまみれた刀を一々鞘に戻して行く演出には、いくら映画という作り物とはいえ疑問が残ったのだった。斑平の師を演じた島田竜三の居合の演武と立ち姿には感銘を受けた。呑気呆亭