2月15日(土)「いいかげん馬鹿」

「いいかげん馬鹿」('64・松竹)監督・脚本:山田洋次 脚本:熊谷勲/大嶺俊順 撮影:高羽哲夫 美術:浜田辰雄 音楽:池田正義 出演:ハナ肇/岩下志麻/花沢徳衛/桑山正一/松村達雄/犬塚弘
山田洋次監督が喜劇における才能を世に示した「馬鹿まるだし」('64)に続く一編。乱暴者でお人好しの風来坊・安吉(ハナ)が故郷の小島を文化的に向上させようと奮闘するが、彼が連れてくるのはニセ楽団やニセ小説家ばかり。そんなこととは気づかない彼の善意はいつも裏目にでてしまう・・・。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎捨て子の安吉(ハナ)を拾って育ててくれた源太爺さんの花沢徳衛の無言の演技が秀逸。家出した安吉がいかがわしい楽団を連れて島に戻ってきて、得意満面で源太に会いに来た時の花沢の肩を震わせながらする嬉しさと怒りとを綯い交ぜにした表情は絶品であった。安吉を演ずるハナ肇のキャラクタ−は渥美清の寅さんに先行するものだと思われがちだが、寅さんにはれっきとした稼業(テキ屋)が有るのに比べて、この馬鹿シリ−ズのハナ肇には定職がなくほとんど浮浪者のイメ−ジがつきまとう。山田洋次という東大出の監督が松竹という会社で、当時華やかに売り出していた「松竹ヌ−ベルバ−グ」の大島や篠田や吉田といった連中の後ろ姿を追いながら、何を考えていたかがこの浮浪者・ヤクザといった社会の底辺に生きる非インテリの人々に入れ込んで行く姿勢に窺われる。呑気呆亭