1月30日(木)「大殺陣」

大殺陣」('64・東映京都)監督:工藤栄一 脚本:池上金男 撮影:古谷伸 美術:富田次郎 音楽:鈴木静一 出演:里見浩太郎/平幹二朗/大坂志郎/大友柳太郎/大木実/宗像奈美/河原崎長一郎/安部徹
★一連の東映集団時代劇の一本。時は四代将軍・家綱の頃。将軍危篤に乗じて、大老・酒井は五代将軍に自分の息のかかった甲府宰相・綱重を立てて、天下を我がものにしようとする。すさんだ政道に憤りを感じた軍学者山鹿素行は一党を組んで、綱重暗殺計画を企てる。'60年代初期の東映は、安保闘争の影響を受けて、それまでの白塗りの時代劇から一変し、テロを扱ったリアルな集団時代劇を量産した。この映画もそうした作品の一本で、監督の工藤栄一と脚本の池上金男は、前作「十三人の刺客」でもコンビを組んだ仲だ。ギラギラした太陽の下で、泥と血にまみれた生々しい大殺陣が繰り広げられる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎前作「十三人の刺客」では筋目の通った侍と侍の闘いを見事な構成で描ききった工藤栄一だが、この作品ではその前例を裏切って、演出の工藤と脚本の池上はまったく違うハプニングに満ちた大殺陣を作り上げて見せた。守る側の酒井一派も攻める側の山鹿素行一派も薄汚れたモラ―ルに堕していて、どちらにも大義も名分もない。当然その両派の激突も仕組まれたものではなく、舞台となった新吉原の大掃除の混乱の中にもたれ込んで泥と血と叫喚と疲弊と偶然にまみれて、計算通りの何が何やら分からぬ大混乱に到る。攻める側の連中がすべて死に絶えた後に、突然怒りを発した部外者の浪人(平)に、守り切った甲府宰相・綱重をあっけなく殺されてしまう結末にも、虚しさが溢れて、前作とは違ったカタルシスがあった。呑気呆亭