1月28日(火)「にっぽん昆虫記」

「にっぽん昆虫記」('63・日活)監督・脚本:今村昌平 脚本:長谷部慶次 撮影:姫田真佐久 照明:岩木保夫 音楽:黛敏郎 美術:中村公彦 出演:左幸子/北村和夫/北林谷栄/吉村実子/河津清三郎/露口茂
今村昌平長谷部慶次とともに書いたオリジナル脚本を監督し映画化。コールガール組織のマダムになった女の半生を、昆虫観察のような視線で描いたドラマ。大正7年に東北の農村で生まれた松木とめは、23歳で製糸工場の女工して働き始めた。しかし地主の本田家へ嫁入りさせられ、出征する俊三に抱かれ妊娠する。娘の信子を出産したとめは本田家を出て製糸工場に戻り係長と関係を結ぶようになるが、会社をクビになってしまう。とめは単身上京し、売春を始める。コールガール組織を作るまでになったとめは、故郷から父親と娘を呼び寄せた。
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◎コールガール組織のマダムになるまでの話は、時にストップ・モ−ションを入れてまるで昆虫の呟きのようなトメの「短歌?」を挿入して笑わせてくれたりして好調なのだが、娘の信子を登場させる頃からゴタゴタとした話になってしまう。だいたい信子が仲間との開拓に必要な資金を母親にねだる設定に無理があって、それが、それまでのトメの逞しい生き方に共鳴していた観客の心情に、一種不快な味わいを生じさせてしまったのだった。呑気呆亭