1月24日(金)「捜索者」

「捜索者」('56・米)監督:ジョン・フォ−ド 原作:アラン・ルメイ 脚本:F・S・ヌ−ジェント 撮影:ウイントン・C・ホック 音楽:マックス・スタイナ− 出演:ジョン・ウェイン/ジェフリ−・ハンタ−/ヴェラ・マイルズ/ウオ−ド・ボンド/ハリ−・ケリ−Jr/ナタリ−・ウッド
★'87年4月、ハリウッド100年を記念して選ばれたアメリカ映画ベスト作品の中で、西部劇部門のベスト1に選ばれた不朽の名作。南北戦争の3年後、イ−サン・エドワ−ズは放浪の末に兄の家に帰ってきた。久し振りに再会を喜ぶのもつかのま、彼の留守中に兄一家がコマンチ族に襲われ虐殺されてしまい、末娘のデビ−だけが殺されずに連れ去られていた。イ−サンは、インディアンの混血青年マ−チンととともにコマンチ追跡の果てしない捜索行に出発する。何年もの間、ふたりはインディアンの居留地を捜し続け、遂にデビ−を発見するが・・・。ここには、「荒野の決闘」や「黄色いリボン」に描かれたフォ−ド本来の持ち味のヒュ−マニズムはない。全編をとおして浮き彫りにされるのは、主人公のインディアンに対するすさまじい憎悪と飽くなき執念だ。かくしてフォ−ドは新境地を拓き、ウェインも会心の演技を見せた。(ぴあ・CINEMA CLUB)

南北戦争に従軍したイ−サンが家に帰らず戦後3年間も放浪してきたことの訳がさりげなく描写されるプロロ−グが心に染みる映像で語られる。兄嫁への思慕に耐えられなくなったことがイ−サンの家出の原因だったのであろう。その思慕を兄嫁のマ−サも感じていて、帰郷したイ−サンの外套を抱きしめるシ−ンにさりげなく暗示されている。この兄ア−ロンの家での家族と帰郷した弟イ−サンと家族の一員の混血の青年と、ウオ−ド・ボンドに率いられた自警団の一隊が入り乱れるプロロ−グの描写の見事さは、小津安二郎の「麦秋」の朝のシ−ンに匹敵するものである。そのプロロ−グはインディアンの襲撃を暗示する不気味な夕焼けの光線に彩られて幕を閉じる。イ−サンの執拗な復讐行はこのプロロ−グあってこそ観客の共感を得るのである。因みに、ウエインが度々見せる左手で右肘を触る動作は、本作にも出演しているハリ−・ケリ−Jrの父であるハリ−・ケリ−へのオマ−ジュだということである。呑気呆亭