1月18日(土)「柳生武芸帳・十兵衛暗殺剣」

柳生武芸帳・十兵衛暗殺剣」('64・東映)監督:倉田準二 原作:紙屋五平 脚本:高田宏治 撮影:わし尾元也 音楽:鏑木創 出演:近衛十四郎/香川良介/林真一郎/北竜二/内田朝雄/大友柳太郎
★神秘的なたたずまいをみせる琵琶湖・竹生島。狂ったように鳴き騒ぐ白鷺の群れが舞い降りる湖上には、白鷺に喰い荒されて死を待つ五人の処刑者があった。処刑されたのは、湖賊の長六右衛門の配下の源と近江之介だった。かつては湖をわがもの顔に横行し、水の忍者として恐れられた湖賊だが、支配者が代った今、公儀の力の前に衰滅の一途をたどっていた。一方、将軍家指南役をつとめる柳生新蔭流は、上泉伊勢守から柳生石舟斎につがれ、さらに独眼の剣豪柳生十兵衛三巌に受けつがれていた。しかし新蔭流を受けついだのは、石舟斎だけではなかった。同門松田織部正も石舟斎を凌駕するほどの腕を持っていた。しかし織部正は豊臣家の禄をはんだが故に野におかれた。幕屋大休は、この織部正の流れをくんだ剣術者だった。大休は、新蔭流正統を証明する印可状と守り刀を竹生島神社から奪い、そのまま江戸に足をのばし、柳生新蔭流に正面から挑戦した。これを知った将軍家光は、大休を斬り、印可状を奪うように十兵衛に命じた。(goo映画)

◎さすがにこの映画の設定では「原作:五味康祐」とするには無理と思ったのであろう、原作は紙屋五平ということになっている。この人のことは知らないが、どうも架空の作者名なのではないかと思われる。
それはさておき、このシリ−ズでは最後の作品となったが、これが一番の傑作であろう。何よりも敵役の幕屋大休を演じた大友柳太郎の柄が良い。新影流正統を名のる幕屋大休の強さは圧倒的で、小太刀をもって立ち向かう大休の剣に太刀を折られたりしてさすがの十兵衛もタジタジで、琵琶湖・竹生島での湖賊と大休の連合軍との決闘では、その無策故に率いた門人たちを皆殺しにされ、散々な目にあいながら漸く大休を討ち取り柳生の名を守ることが出来たのだった。これ以前のシリ−ズでは女優さんたちの扱い方が噴飯物であったが、この作品の湖賊の頭領の娘美鶴を演じた宗方奈美はいかにも野性的な魅力に満ちていたし、十兵衛を助ける村の女を演じた岡田千代もまた、その目の光で男たちの凄まじい殺戮戦の直中にあって存在感を放っていたのだった。呑気呆亭