12月4日(水)「ララミ−から来た男」

「ララミ−から来た男」('55・米)監督:アンソニ−・マン 原作:ト−マス・T・フリン 脚本:フィリップ・ヨ−ダン/フランク・バ−ト 撮影:チャ−ルズ・ラングJr 音楽:ジョ−ジ・ダニング 出演:ジェ−ムス・スチュワ−ト/キャシ−・オドンネル/ア−サ−・ケネディ/ドナルド・クリスプ
★マン監督とスチュワートの黄金コンビの西部劇の面白さは、人間的なジミーが暴力の価値に最後まで否定的なのに、それが活劇自体の面白さと違和感なく結ばれていることで、ロケーションの工夫も常にあり視覚的驚きにも事欠かない。本作はD・クリスプ親子の確執に、流れ者のジミーが絡む形で、話の焦点がうまく絞られきらない弱味があるが、大地主のクリスプに反抗する女性牧場主の描き方など、場面にすれば僅かでも、非常にリアルで感心する。ララミーからやって来た元騎兵隊大尉ロックハート運送業の配達で、アパッチによって弟が命を落とした土地に近い、地主ワグマン支配下の町にやってくる。その老人はかなり強引にのしてきた暴君ではあったが、目を病んで病気になり引退を考えていた。東部出身の妻の虚栄のうちに育てられた息子デイヴはわがままで乱暴で手に負えず、実子のように目をかけているヴィク(ケネディ)が頼みの綱だが、いざとなると息子が可愛い。デイヴに襲われ馬車を焼かれ、ラバを何頭も撃たれ廃業やむなしとなったロックハートは、ヴィクの恋人でデイヴとは従姉妹同士のバーバラに魅かれたこともあり、しばし当地に留まることにした。そのうち、密偵に雇った老人からの情報で、アパッチに通じる者の姿が浮かびあがってくる。彼はデイヴの度重なる嫌がらせに耐え、ワグマンに譲らず自分の小さな牧場を守り続ける老女ケイトを手伝いながら、真相解明の機会を待つが…。アクション場面として面白いのは牛の群れの中でのジミーVSケネディの殴り合い。それから目の効かないクリスプが馬に乗ってジミーと対決しようとする、馬上からのショットにはハッとさせられる。彼とケイト役のA・マクマホン、二老優がとにかく健闘。単なる勧善徴悪でなく、陰々滅々でもない、見応えのあるウェスタンだ。<allcinema>

◎同じ西部劇のスタ−でありながらスチュワ−トとウエインの違いは実に興味深い。この二人の間にヒップ・スタ−のジェ−ムズ・ディ−ンやマ−ロン・ブランドやポ−ル・ニュ−マンを置いてみると、アメリカ映画の男優の鳥瞰図が浮かんでくるように思える。ウエインは表だけの男、スチュワ−トは表の顔の裏に屈折した思いを秘めている男、そしてこの二人ともがアメリカ映画の男性像の両極を代表しているのだ。この映画もそうしたスチュワ−トの西部劇の1本。見所はワグマンに対抗するジミ−を温かく見守る女牧場主のケイトの肝の据わった存在感と、その彼女が長年秘めてきたワグマンへの恋心。そして頑固ではあるが公正さを失わないワグマンが、一人息子のデイブと右腕としてきたヴィクを亡くし、その上失明するという苦境に陥った時に、ケイトはそっとその傍らに寄り添うのだった。呑気呆亭