12月3日(火)「遠い国」

「遠い国」('54・米)監督:アンソニ−・マン 脚本:ボ−デン・チェイス 撮影:ウイリアム・ダニエルス 音楽:ジョセフ・ガ−シェンソン出演:ジェ−ムズ・スチュワ−ト/ル−ス・ロ−マン/コリンヌ・カルベ/ウォルタ−・ブレナン/ジョン・マッキンタイア
★1896年。ワイオミングからアラスカのスキャグウェイへ牛群を輸送中のジェフ・ウェブスター(ステュワート)とベン・テイテム(ブレナン)は、シアトル港で殺人嫌疑をうけたが、危いところをロンダ・キャッスル(ルース・ローマン)という美人にかくまわれた。2人がスキャグウェイに着いたとき、思わぬことで町の顔役ギャノン(マッキンタイア)を怒らせ、ジェフは投獄された。しかし、この町で酒場を営んでいる例のロンダがギャノンに彼の命乞いをしてくれたので牛を没収されただけで命は助かった。ジェフはギャノンに復讐しようとしたが、酒場で働く純情な娘ルネ・ヴァロン(コリンヌ・カルヴェ)に止められ、奥地のドースンに新しい酒場を開きに行くロンダと同行することになった。ジェフは行きがけの駄賃に没収された牛群をとり返した。ルネもジェフを慕って一行に加った。一行は途中雪崩に襲われたりして難行の後ドースンに着き、ロンダは住民の反対をよそに酒場を開き、ジェフらは牛を売った金で砂金採掘権を買った。一方ギャノンはドースンにまで手をのばし町は混乱状態におちいった。金を採ったジェフは間道づたいに町を去ろうとしたがギャノンの部下に襲われて、ベンは射殺され、ジェフも重傷を負った。ベンの死体を馬に乗せて帰ったジェフはロンダとルネの介抱をうけた。ギャノンの横暴は次第につのり、町民たちは耐えられなくなって引き上げの準備をはじめた。ジェフはルネに激励されてギャノンと戦う決心をし、果たし合いを申し込んでその夜単身町の酒場へ赴いた。そして待ち伏せていたギャノンの部下を倒したとき、ギャノンに背後から狙われたが、これを見たロンダが飛び出してギャノンの弾を受け、息絶えた。ジェフはついにギャノンを倒した。(goo映画)

◎のっけにジェフが牛追いに雇ったカウボ−イ四人の内二人を射殺したことが明らかにされる。二人のカウボ−イもジェフに恨みを抱いているようだ。このことで荒野の暮らしで形成されてきた果断非情なジェフの性格が明らかにされる。彼が心を許している人間は相棒のベンだけのようだ。そのジェフの頑なな心が純情で真っ直ぐな心の娘ルネによって徐々に解されてゆく。このあたりのアンソニ−・マンによるジェフ=スチュワ−トの造形は「ウインチェスタ−銃'73」のそれとは異なってやや捻ったモノになっている。そのジェフに対抗する敵役のマッキンタイアが好い。格好もダンディで皮肉に富み銃の腕も確かで、荒くれ者を取り拉いで瞬く間に町を支配してしまう魔術的な力を持っている。この一癖ある二人の対決がアラスカの雄大な景色をバックにして描かれ、まことに見応えのある娯楽映画になっている。呑気呆亭