8月27日(火)「腰抜けペテン師」

「腰抜けペテン師=THE LEMON DROP KID」('51・米)監督:シドニ−・ランスフィ−ルド 脚本:エドマンド・ハ−トマン/フランク・タシュリン/ロバ−ト・オブライエン 音楽:ジェイ・リヴィングスト−ン/レイ・エヴァンス 出演:ボブ・ホ−プ/マリリン・マックスウェル/ロイド・ノ−ラン/ジェ−ン・ダ−ウェル
★ノミ屋の「飴玉キッド」ボブ・ホープが、ガセねたを流した相手がギャングの女だった事から1万ドルを払えと脅迫されます。その返済期限がクリスマスなので、募金運動にからんで養老院を利用して金を集めるという話です。
クリスマスを背景にしているのが、この映画の底流にあって主題曲「Silver Bells」はこれでヒットしたクリスマス・ソングです。マリリン・マクスウェルとホープのデュエットもかなりのものだと思います。牛が出てくると「ホパロン・キャシディのつもりか」と言う台詞やラストで牛がリースをつけて出てくる場面もそれに絡んで面白いです。
脇役でロイド・ノーランは私が好きな俳優でしたが、ウィリアム・フローリイは最近再放送されている「アイ・ラブ・ルーシー」の家主役ですから、今は彼の方を知っている人が多いと思います。
それにしても、おばあさん役ジェーン・ダーウェルに貫禄があって、喜劇の中で重みをつけています。サイレント時代から脇役ながら、かなりの名作に出演していて、この人の出演作をすべて見れば、ほぼアメリカ映画が解るといっても良い位の人です。〈allcinema=ikeda〉

◎ボブ・ホ−プという人は、動作や表情で笑わすチャップリンやキ−トンのような種類の喜劇俳優ではない。この映画の主人公であるレモン・ドロップ・キッドが競馬場で繰り返す詐欺行為の可笑しさは洗練されたドライなもので、その活動のために彼はダンディな服装に常にこだわり、チャップリンのようなボロ服を身に着けることは決してしない。そのスノッブさが彼と同様にスノッブな観客の共感と我が身を省みての笑いを呼ぶのではないだろうか。彼はどんな窮地に陥ってもへこたれず、暴力には生まれつき弱いので決してキ−トンのように肉体的に活躍することなく、その都度小才を使って切り抜ける。邦題に常に「腰抜け」と記される所以だが、この男、なるほど腰抜けではあるのだが実はしたたかな反骨心の持ち主であって、この映画でも見事にギャングのボスに一杯食わせて我々の溜飲を下げさせてくれるのである。呑気呆亭