8月9日(金)「拳銃王」

「拳銃王=THE GUNFIGHTER」('50・米)監督:ヘンリ−・キング 原作:アンドレ・ド・トス 原作・脚本:ウイリアム・ボク−ズ 脚本:ウイリアム・セラ−ズ 撮影:ア−サ−・ミラ− 音楽:アルフレッド・ニュ−マン 出演:グレゴリ−・ペック/ヘレン・ウエストコット/ミラ−ド・ミッチェル/カ−ル・マルデン/ジ−ン・パ−カ−
★西部一の早撃ちと噂される男が、名前を隠して教師をしている妻のもとを訪れる。そこは、彼の親友が銃を持たない保安官として治安をあずかる穏やかな町だったが、サルーンに彼がやって来たという話が伝わると、小学校の男子生徒たちをはじめ、町中の男たちが見物に集まり、女たちは眉をひそめた。彼に息子を殺されたと思い込み、命をねらう老人もいる。また、イキがった若造の荒くれがつけ回す。そして、そこに立ち寄る前の宿場で、やむなく撃ち殺した男の兄たちが現れる時間も近づく。彼はその三兄弟に襲われたとき、馬を奪いとったのだが、三兄弟が徒歩ででも追いかけてくるのは目に見えていた。最早、一刻の猶予もないのだが、彼は一目妻に会いたくて、代理に立てた知り合いの婦人の返事を待つ…。“早撃ち”の宿命を背負う男=ジミー・リンゴにペック、妻ペギーにウェスコット、酒場の亭主はK・マルデン、保安官をM・ミッチェル。いずれも好演で、「真昼の決闘」にも似た時間とのたたかいが描かれるソリッドなウェスタン。<allcinema>

◎酒場で妻のペギ−を待つリンゴの態度が或ることをきっかけにして180度変化する。それは何気ない挿話であった。町中がリンゴをめぐって沸き立っているその最中に、ふらっと酒場に現れた若い農夫が、バ−で飲んでいるリンゴに肩を並べて“嬉しいことが有ったので一杯やりに来た、妻からは一杯だけ許可をもらって来たんだ。あんたも付き合ってくれるかい”とリンゴに話しかける。リンゴはその素朴な態度に共感を覚えて一杯付き合い、彼の堅実な生活設計に或る感動を覚える。そして彼に“お返しに一杯おごりたいが・・・”というのだが、彼は“一杯だけと約束したので結構!”といって一杯のウイスキ−でご機嫌になって帰って行く。この場面からリンゴの態度は、どうしても妻に会い話がしたい、そしてその望みが叶っても、今度は息子と話がしたいと、意固地なほどに変わったのだった。リンゴはここで本当にガンマンとしての名を捨て、堅気になって生活をやり直したいと思ったのである。皮肉なことに、その望みが妻にも受け入れられた時、リンゴに最期の時が来たのだった。呑気呆亭