8月8日(木)「勇者のみ」

「勇者のみ=ONLY THE VALIANT」('51・米)監督:ゴ−ドン・ダグラス 脚本:エドムンド・H・ノ−ス/ハリ−ブラウン 音楽:フランツ・ワックスマン 出演:グレゴリ−・ペック/バ−バラ・ペイトン/ギグ・ヤング/ウォ−ド ・ボンド/ロン・チェイニ−Jr/マイケル・アンサラ/ネヴィル・ブランド/ジェフ・コ−リイ
★恋敵の同僚を自分の身代わりに危険な任務に就かせたと誤解された騎兵隊大尉が、汚名返上に、隊の荒くれや出来損ない兵で構成したゲリラを率い、援軍到来までアパッチを引きつけ、最後に撃破するという、低予算西部劇や戦争映画の一分野と言っていい“砦攻防戦”ものの佳作。何しろ部下の全員が何らかの形で彼に恨みを持っていて、大尉ランス(ペック)はいつ殺されてもおかしくないという環境。彼はそうした悪意を逆にアパッチとの戦いに差し向けていく。自らの手を汚さずに厄介者の始末をつける--という風にも見えなくはないが、大体どの兵も心のわだかまりが解けた所で潔く死んで、ランスは悪者にならずにすむが、何か複雑なさっぱりしない性格で、こういう人物を演じるとペックはすこぶる感じが出る。W・ボンドはいつものヴィクター・マクラグレンもどきで可もなく不可もなし。それよりは鬚もじゃの“死の騎兵”を名乗る軍曹R・チェイニーのアクの強さが魅力的。<allcinema>

◎アパッチの元に潜入して瀕死の状態で帰還した斥候のジョ−から、援軍がわずか31名であることを知り、全滅を覚悟したランスはジョ−を埋葬して皆に告げる。“明日も死者が出るだろう、理由も知らずに死にたくなかろう、なぜ自分がこの任務に選ばれたか知りたかろう。目的はウインストン砦を守ることだ。だから死んでも惜しくない者を選んだ。個人的な理由も述べるが、聞きたくなければ去れ。よろしい。サ−ジャント・マ−ドック、君は弱い者いじめと暴力が好きらしい。だから昇格もさせなかった。今度の任務で死んでもいい”“イエス!”“オンスタット、1度脱走した者は何度でも脱走を試みるものだが、ここなら砂漠が阻んでくれる”“イエス”“ルトリッジ、私に放校処分にされた復讐しか頭にない。教育も受け能力もあるのに何もしない、無気力な男は不用だ”“イエッス・サ−”“ケプシアン、お前の理由はその「心」だ。何を考えているかは知らん。ここなら邪悪な考えもそれほどの害もなかろう”“ノウ・サ−”“サクストン、ラッパ吹きを嫌がっていたが昨夜のざまは何だ!お前はただのおくびょう者だ”“ノウ・サ−”“ギルクリスト、酒癖は悪い、ケンカも多い、軍の所有物をすぐに壊す。軍人とは思えん。ウインストンに残しておいても役には立つまい”列の手前に立つ副官が進み出て、“私はどうです”“君は将校だから”“教えて下さい”“よし、君は病気だから、病身なら死んでも・・・”“ゴフッゴフッ!”“ほらな、エニ−・クエスチョン?”“有ります”とギルクリスト。“我々の欠点は分かりました。でも大尉にも理由があると、みんな思っています。大尉がここに来た理由を教えましょうか”“話せ”“ツ−ソスの護送任務の命令が急に変わり、都合のいいことにハロウエイが死んだ。その罪悪感から危険な任務を俺たちを道連れに・・・。当たってるでしょう”“そう思うか、気をつけ!解散”
31名の援軍とは最新のガトリング機関砲を装備した一隊だった。その援軍をこの砦の迎えるために病身の副官は決死の脱出を試みる。ラスト、砦に生き残っていたのはランス大尉とギルクリストとサクストンの3人のみだった。呑気呆亭