7月18日(木)「羽織の大将」

「羽織の大将」('60・東宝)監督:千葉泰樹 脚本:笠原良三 撮影:西垣緑郎 美術:河東安英 音楽:佐藤勝 出演:フランキ−堺/桂小金治/加藤大介/団令子/原知佐子/桂文楽/安藤鶴夫/柳家金語楼
★大学卒業間近の十文字忠夫は好きな落語家になる決心をして、無理矢理桂文楽師匠の弟子である桂五楽師匠の内弟子になった。やがて、小文という芸名を貰った。かけ出しの小文になにかと好意を見せるのが「万盛軒」の春江である。ようやく前座に出られるようになった日、北海道から母親のこうと妹の勝子が上京して来た。法律事務所に勤めているとばかり思っていた息子が高座にいるのでびっくり。五楽のとりなしで母の怒りをとにかくいなした小文は、女子大に入る勝子と一緒にアパート住いをすることになった。思いがけぬチャンスが訪れた。ひいきの奥山社長に連れて行かれたナイトクラブで即興の漫談をやったのが、たまたま同席していた放送プロデューサーの目にとまったのだ。小文は新作ものに踏み出し、マスコミに追われる人気者になった。学友の亮太郎の応援演説を頼まれ、亮太郎は当選した。しかし買収の疑いで小文も逮捕された。五楽の身許引受けによって陽の目を見た小文を持っていたのは、ラジオ、テレビからの出演拒否であった。goo映画

◎フランキ−堺の芸達者ぶりが楽しめるとともに、桂文楽と安鶴さんが本人役で出てくれてしゃべって動いてくれているという、実に貴重な作品である。そうそう、金語楼さんも出ていたっけ。桂小金治という人は、この映画の主人公である小文(フランキ−堺)のように、将来を嘱望されていた噺家さんだったのだが、落語界を離れて映画俳優になってしまったのだから、その彼を小文の落語離れを意見する兄弟子に起用するというのは、かなり皮肉の効いたキャステイングである。ちなみにワタクシは小金治さんの落語を聞いたことがあるのだが、実に堂々とした話っぷりで驚嘆した覚えがある。俳優としても味のある脇役として成功したが、もし彼がそのまま落語を続けていたら必ずどこの席でもトリを勤められるような大看板になったであろうに、惜しい才能を落語界は手放したのものである。呑気呆亭