6月29日(土)「地獄の英雄」

「地獄の英雄」('51・米)製作・監督・脚本:ビリ−・ワイルダ− 脚本:レッサ−・サミュエルズ/ウオルタ−・ニュ−マン 撮影:チャ−ルズ・ラング 音楽:ヒュ−ゴ・フリ−ドホ−ファ− 出演:カ−ク・ダグラス/ジャン・スタ−リング/ボブ・ア−サ−/ポ−タ−・ホ−ル/ジ−ン・エバンス
★B・ワイルダ−監督が、初めて独自のプロダクションで製作した、非情なまでの末路をたどるジャ−ナリストの姿を描く作品。アル中のために二流新聞社の記者に落ちぶれたチャ−ルズは、インディアンの洞穴に生き埋めになった男に事件に遭遇し、やらせの特ダネで一流新聞に返り咲こうと図るのだが・・・。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎この映画を観ながら2010年8月5日に起きた「チリ・サンホセ鉱山事故」のことを思い出していた。地下に閉じ込められた33人の救出劇が大々的に報じられ、世界の目はこの時期チリに集中した。現場に集まった報道陣は2500人と言われ、10月13日、21時56分に最後の一人が救出されて事件は終わった。救出に使われた資金は1000〜2000万ドルといわれ、頻繁にメディアに登場したビニエラ大統領の支持率は46%から56%に上昇したと言われている。
ワイルダ−は自身初のプロダクションでの製作ということで意気込んだのだろう、彼にしては正面切った社会的なテ−マを取り上げて巨大なセットを組んで大作を作り上げたのだが、それこそ原題そのままの「BIG CARNIVAL」になってしまった。盟友チャ−ルズ・ブラケットとは前作の「サンセット大通り」で袂を分かち、製作・監督・脚本の三役を一人でこなし、カ−ク・ダグラスというおよそ彼の作風にそぐわぬ役者を使って、無理に無理を重ねた故か、名手にしてはユ−モラスな味付けのない殺風景な作になってしまった。呑気呆亭