2月15日(金)「七人の侍」

七人の侍」('54・東宝)製作:本木荘二郎 監督・脚本:黒澤明 脚本:橋本忍/小国英雄 撮影:中井朝一 美術:松山崇 音楽:早坂文雄 出演:志村喬/三船敏郎/木村功/稲葉義男/千秋実/宮口精二/加東大介/津島恵子/島崎雪子/藤原鎌足/土屋嘉男/左卜全/東野英治郎/上田吉二郎/多々良純
★日本の時代劇に西部劇の面白さを取り入れ、黒澤流のヒュ−マニズムを盛り込んだ黒澤映画の最高峰。その後、「荒野の七人」「宇宙の七人」など、この映画をお手本にした作品が続出した。志村喬演ずる勘兵衛が泥棒を斬るシ−ンでスロ−モ−ションが使われているが、これにヒントを得たサム・ペキンパ−がアクション場面でこの手法を引用したことは有名な逸話。戦国時代、野武士が野盗化していた頃、貧しい農村の百姓たちが、野盗から村を守るため、侍を雇うことにする…。中略
早坂文雄作曲の「侍のテ−マ」が実に印象的に使われており、次に展開するドラマへの期待感を盛り上げる。後略 (ぴあ・CINEMA CLUB)

◎遥か昔、高校生の頃に映画研究会を創って初代部長に収まり、映画館とタイアップして割引券を売りさばき、その収益で学内で上映したのがこの「七人の侍」だった。当時の高校生にとってはクロサワの名は絶対であって、オヅもミゾグチもキノシタもナルセも問題ではなかったのだ。それは敗戦後の'50年に「羅生門」でベネチア映画祭のグランプリを獲得したことで、疲弊したニッポン人に勇気を与えた故の英雄視であったのだろう。この「七人の侍」はクロサワの最高傑作と言われていたのだ。以来、何度この映画を観たことだろうか。
今回見直してみて気が付いたのが、この映画にリアルさを与えたのは実に無名の村人たちだったということだった。特に菊千代の周囲に常に群がって立ち騒ぐ子供たちの可愛らしさといったらない。これ以前にも以後にもクロサワがこのように子供たちを使った例を知らないが、過酷な現実にホッとするユ−モアの味付けをした菊千代と子供たちの存在あってこそのラストの雨中の激闘が生きたのだと思ったことであった。蛇足になるが、サム・ペキンパ−が「ワイルドバンチ」でクロサワから引用したのは、スロ−モ−ションの技法よりも、この子供たちという無垢の神々だったのだと思う。因みにワイルドバンチの首領パイクは少年兵の銃によって射殺されるのである。呑気呆亭