1月30日(水)「沓掛時次郎」

「沓掛時次郎」('54・日活)監督:佐伯清 原作:長谷川伸 脚本:菊島隆三/井出雅人 撮影:藤井静 出演:島田正吾/水戸光子/香川良久/辰巳柳太郎/林幹/石山健二郎/外野村晋
★一宿一飯の恩義から何のうらみもない六ツ田の三蔵を斬った沓掛時次郎は、三蔵から身重の妻・おきぬと子供の太郎吉を、おきぬの実家に送り届けることを頼まれ、承知する。おきぬは時次郎が憎かったが…。新国劇の役者が勢揃いした日活時代劇の第二作。(ぴあ・CINEMA CLUB)

長谷川伸さんの原作は何度も映画化されているらしいが、ワタクシが見ているのは辻吉郎監督のそれと加藤泰監督の「遊侠一匹」とこの映画の三本である。それぞれが独特の味わいを持った作品であるが、この佐伯清監督の作品は、長谷川伸の世界を忠実に再現しているという点では一番ではないかと思う。島田の時次郎は古風なほどに律儀だし、水戸のおきぬは切なく美しく、そして子役の太郎吉もけなげで可愛いい。貧しくはあるがこの道中の描写に、長谷川伸が若き日に見たという、請負人であった父親の元に身を寄せていたいわく有りげな子連れの男と女の仮初の「家族」の姿を見ることが出来る。呑気呆亭