1月17日(木)「男はつらいよ・純情篇」

男はつらいよ・純情篇」('71・松竹)監督・脚本:山田洋次 脚本:宮崎晃 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演:渥美清/倍賞千恵子/前田吟/森川信/三崎千恵子/若尾文子/宮本信子/森繁久彌
★毎度おなじみ「男はつらいよ」シリーズの第6作。マドンナ役に若尾文子を迎え、山田洋次が脚本(宮崎晃と共同)・監督を務めた。森繁久彌宮本信子がゲスト出演し、ストーリーに幅を持たせている。
フーテンの寅こと車寅次郎は、冬の五島列島福江島に来ていた。赤ん坊を連れた出戻りの絹代と、その父の千造との再会を目にした寅次郎は、故郷の柴又が無性に恋しくなってしまう。柴又のとらやに戻った寅次郎だったが、留守中に自分の部屋を誰かに貸していることを知り、カンカンになって家を出ようとした。しかし間借りしていた美人の夕子を見て、旅に出るのをやめてしまった。妹さくらの夫である博から、会社を辞めて独立したいと相談された寅次郎は、社長の梅太郎に話しに行くのだが…。〈allcinema〉

◎この篇はむしろ「望郷篇」と名付けられるべきだった。一貫しているテ−マは故郷への回帰というもので、そのテ−マは五島列島の旅館主千造を演じた森繁久彌の口から発せられた一言と、その千造を前にして望郷の想いを語る渥美清の、森繁を意識した名演によって決定されるのである。寅がいつものように失恋して、もう帰らぬと決意して妹のさくらに電車のドア越しに“故郷ってやつはよう…”と発する言葉は悲痛な響きを帯びてシリアスであった。マドンナ役の若尾文子はやはり別格で、ふと寅の自分に寄せる恋心を察するシ−ンの微妙な表情の変化は絶品であった。復帰ということで云えば、夫から離れようとした二人の女、絹代(宮本)も夕子(若尾)も、夫の元に復帰するのだった。呑気呆亭