11月27日(火)「鴛鴦歌合戦」

「鴛鴦歌合戦」('39・日活)監督:マキノ正博 脚本:江戸川浩三 撮影:宮川一夫 音楽:大久保徳三郎 出演:片岡千恵蔵/市川春代/志村喬/深水藤子/ディック・ミネ/香川良介
★一部のファンの間でカルト・ム−ビ−となっている時代劇ミュ−ジカルの傑作。太平洋戦争へ日本が傾斜していく暗い時代、戦争協力映画が多く作られていたなかで、マキノはひたすら軽快・軽妙な映画を作っていた。日本のミュ-ジカル映画はあまり成功していないが、この映画は例外的に成功した作品といえるだろう。貧乏浪人・浅井礼三郎(片岡)は、長屋の隣家の娘・お春(市川)と恋仲だった。だが、礼三郎に想いを寄せる娘が他にもふたり。そのおとみと藤尾はどちらもゆずらず、歌合戦にこと寄せて、皆が集まれば喧嘩が絶えない。ところが、峯沢丹波守(ディック・ミネ)という陽気な殿様がお春にひと目惚れし、お屋敷へさし出すよう申しつけた。お春の父(志村)はそれを断るが…。
♪ボクは陽気な殿様…♪と歌いながら登場してくるディック・ミネといい、珍しく渋い歌声を聞かせてくれる名優・志村喬といい、思わず爆笑し、感心してしまう場面がいっぱい。映画とはこんなにも観る者を幸福にしてくれるのかと改めて感じさせてくれる一編。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎その名はツトに聞いていたのだが、今回はDVDでの初見。思わずブッタマゲて椅子から転げ落ちそうになった。国が戦争をやっている最中にこんなふざけた(当局にとって)映画が作られていたとは…。全編、台詞が自然に歌に替わり掛け合いの歌合戦になる。片岡も志村も市川も深水も唄う。中でも秀逸なのが陽気な殿様(峯沢丹波守)を演じる歌手・ディック・ミネのナンセンスぶりである。唯一時代劇らしい、殿様の家来たちと千恵蔵の立ち回りも、軽快な音楽に乗った振り付けでナンセンスさが際立って面白く、改めてマキノという監督の懐の深い才能を感じさせられたのだった。脚本の江戸川浩三(作詞もか?マキノの筆名?)と音楽担当の大久保徳三郎に拍手!呑気呆亭