8月7日(火)「アラン」

「アラン」('34・英)監督:ロバ−ト・フラハティ 脚本:ジョン・ゴ−ルドマン他 音楽:ジョン・グリ−ンウッド 出演:コ−ルマン・キング/マギ−・ディーレン/マイケル・ディーレン
アイルランド西方に位置するアラン島。この厳しい自然の支配下にある孤島にも人間の生活がある。荒れ狂う海に船を出す漁夫のキングと岩だらけの土地を耕す妻のマギ−。現地の人々の出演によって四季を通しての荒々しい自然との闘いを描いた人間ドラマ。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎1962年のATG(ア−トシアタ−ギルド)の設立当時、17歳だったボクは第一回の配給作品「尼僧ヨアンナ」('61・ポ−ランド)の難解さと妖しさに参ったりしていたのだが、その当時京橋の近代美術館にフイルム・ライブラリ−が開設されて、その第一回の企画上映であったと記憶するのだが「実験映画祭」というものが催されて、数十本のアヴァンギャルドな短篇が上映された。これこそ日本版のシネマ・テ−クだと、その映画祭には連日のように通って上映作品を見たのだが、この「アラン」は今でも鮮明に記憶に残っている三本の内の一本であった。他の二本は、ルイス・ブニュエルの「アンダルシアの犬」とヨリス・イヴェンスの「雨」である。
純粋なドキメンタリ−ではないのだが、その映像の迫力はとてもあらかじめ仕組まれて作られた映画とはとても思えない作品である。まるで意志あるもののように荒れ狂う海に闘いを挑む漁師たちの素朴な生活の有様を坦々としかし命がけで記録したに違いない映像は驚異的で、一度見れば一生記憶から消えることはないだろう。傑作である。呑気呆亭