6月15日(金)「ビッグトレイル」

「ビッグトレイル」('30・米)監督:ラオ−ル・ウォルシュ 製作:ア−チボルド・ブキャナン 出演:ジョン・ウエイン/マ−ガレット・チャ−チル/タリ−・マ−シャル/エル・ブレンデル/タイロン・パワ−(Sr)/イアン・キ−ス
ミシシッピからオレゴンへと西部開拓の夢を抱いた大幌馬車隊。狩人のブレック(ジョン・ウエイン)を先導役に大開拓団が、インデイアン襲撃、大河の激流、暴風、猛吹雪などの数々の困難に立ち向かいながらも、新天地を目指して果敢に前進して行く過酷な旅を描いたドラマ。
ト−キ−映画初期に、200万ドルという巨額を投じて創り上げた超大作西部劇。主演は若き日の姿が清々しいジョン・ウエイン。撮影所で小道具係兼俳優として働いていたところを、監督に見出され、マリオン・モリソンからジョン・ウエインと改名、見事初主演を果たした。西部劇の王者とまで呼ばれるようになったジョン・ウエインの名が、この世に誕生した記念すべき作品である。DVD解説

◎これはまさにアメリカ合衆国の「建国神話」である。ワタクシが合衆国大統領であったなら、アメリカの各家庭には必ずこのDVDを備えるように義務付けるであろう。
この、ミシシッピからオレゴンまでの4000キロに及ぶ父祖たちの苦難の旅を子供たちに見せてやることは、最近は金銭亡者に成りかけているアメリカ国民の健康にとってどれほど有効であることか。
開拓団の幌馬車は後の映画に登場するヤワな物ではなく、実際に使われたと思えるようなガッシリとした武骨な構造で、その幌馬車が激流を渡るシ−ンや、ロ−プと滑車を使って断崖を吊り下すシ−ンは、撮影の苦労と共に当時の開拓団の苦労の様が偲ばれるリアルさで活写される。そしてこれは是非とも言って置かなければいけないのは、開拓団の女たちのたくましさである。男たちに伍して斧を振るって巨木を刈り倒し、インデアンの襲撃に敢然と立ち向かい、激流を渡る幌馬車を御し、死者を埋葬し赤子を生むという、彼女たちこそが幌馬車隊の魂だと思えるのだった。
若々しいジョン・ウエインはこれが初主演とは思えぬほどに堂々と幌馬車隊の先導役を演じていて、まるでヤマトタケルのように英雄的で、時に荒ぶる神スサノヲのように怒りを現す。そのタケルに配するタチバナ媛のごときマ−ガレット嬢も気強くけなげで美しく、遂に復讐を果たし戻って来たタケルを神話的な巨樹の傍らに迎えに赴くシ−ンの胸の躍る感動は、かつてどの映画でも味わったことのない類のものであった。再び言う、これは「神話的」な傑作である。呑気呆亭