5月25日(金)「右門六番手柄・仁念寺奇談」

「右門六番手柄・仁念寺奇談」('30・東亜キネマ)監督:仁科熊彦 脚本:山中貞雄 出演:嵐寛寿郎/頭山桂之介/尾上紋弥/原駒子
佐々木味津三の原作を当時無名の山中貞雄が執拗に映画化を希望した企画で、嵐寛寿郎が右門に扮して“鞍馬天狗”と並ぶ当たり役となった。
八丁堀の同心・近藤右門は、ハンサムで腕も度胸も抜群だが、長考で必要なこと以外はしゃべらないことから“むっつり右門”とあだ名される。一方子分の伝六は“おしゃべり伝六”とあだ名され対照の妙をみせる。
武州忍の松平伊豆守の城下に奇怪な辻斬り事件が発生。はるか江戸から招かれたむっつり右門は伝六を従え事件解決に乗り出す。原駒子が、櫛巻のお由に扮して大活躍。(ぴあ・CINEMA CLUB)

マツダ映画社活弁ト−キ−版で見たのだが、全編に丁寧な音声が付けられているので、それが申し訳ないが少々うるさくて、そのために、右門の周囲をハネ回るだけで何の役にも立たぬおしゃべり伝六の存在が、対照の妙どころかうっとうしくなってしまったのだった。
山中貞雄の脚本であるから、おそらく原本では効果的に省略された字幕と画面とがテンポ良く展開されて、観客には心地良いリズム感を味あわせてくれたのではないかと思う。これまで見て来た「活弁ト−キ−版」の活動写真が、そうした抑制された処理の仕方で原本の味を損なわずに見せてくれただけに、この作品のご都合主義の展開と台詞のうるささには閉口した。呑気呆亭