5月15日(火)「国民の創生」

国民の創生」('15・米)監督:D・W・グリフィス 出演:リリアン・ギッシュ/ヘンリ−・ウォルソ−ル/メエ・マ−シュ/ラオ−ル・ウオルシュ
アメリカ映画史上初めての長編劇映画であり、カット・バックやクロ−ズ・アップなど、ドラマと渾然一体となった映画の技法に時代を画した問題作。
空前のスケ−ルで描かれる南北戦争の動乱の中で、北軍と南軍に引き裂かれてゆくキャメロン家とスト−ンマン家の息子たち、娘たち…。壮大な叙事詩は当時全米の人々の熱狂を引き起こし、巨大な利益をもたらした。その一方、あまりにも過激な人種差別観はすでに公開当時から世論のごうごうたる非難を浴びた。主演のL・ギッシュはこの映画を史上最高の映画と言い、「八月の鯨」まで映画の歴史を生き続ける。なお、リンカ−ンの暗殺者に扮しているのは、この映画の助監督を務めた後の監督、R・ウォルシュである。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎敗北した南部に対して穏健な処置によって対処しようとしたリンカ−ンが暗殺されたことによって、南部には解放された黒人による無政府状態がもたらされた。自身、南軍大佐の息子であったというグリフィスは、ト−マス・ディクソンの原作「クランズマン(Clansman)」を題材として、その無政府状態を乗り越えるためにK・K・K(ク−・クラックス・クラン)を結成した南部人の行動を肯定的に描いたために、世論の非難を浴びたのだった。最初、グリフィスは原作の原題をそのまま映画のタイトルにしようとしたらしいが、それではあんまりだということで、「The Birth of a Nation」(国民の創生)に変えたのだという。
映画自体の出来は、俳優たちの大仰な演技と黒人をまるでゾンビのような存在として描こうとするグリフィスの視点に辟易させられるが、最初の長編劇映画ということであるからして、アメリカ映画史上の記念碑的作品であることは言えると思う。そしてまた、今日の南北対立、グロ−バルVsアンチグロ−バルの対立の図式がすでにこの時点で露わになっていること、そしてまた、決して相容れない血の相克を裡に抱えたままに結成されたNATIONであるUSAという国の世界史的な危うさのことまで、考えさせられる作品でありました。呑気呆亭