5月11日(金)「雄呂血」

「雄呂血」('25・坂妻プロ)製作:牧野省三 監督:二川文太郎 原作・脚本:寿々喜多呂九平 出演:坂東妻三郎/関操/環歌子/春路謙作/中村吉松
★それまでの大見得をきるような旧劇から、時代劇に激しい立ち回りを持ち込んで、新しい波を作り出した大スタ−、坂東妻三郎。その無声映画時代の代表作が本作品だ。主人公を最後のギリギリの淵まで追いつめ、爆発的な大乱闘を展開するという手法を日本映画に定着させた大作である。

善意の行動が誤解を受けて藩を追われた若侍が、放浪の旅の途中で知り合った女に裏切られ、ある親分の用心棒となる。が、親分が若侍の初恋の女を理不尽にも犯そうとするのを知り、ついに怒りが爆発。捕手多勢を相手に大立ち回りを演ずる…。熱い反逆のニヒリズム、立ち回りの間(ま)に見せる血のたぎりを時代劇に持ち込んだ記念碑的作品。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎若侍平三郎の逆上しやすい精神の脆弱さに前半はへきえきする想いで見ていたのだが、さすがにラストの約10分間に及ぶ大立ち回りはすさまじい迫力で、坂妻はヒ−ロ−とはこうしたものだということを力ずくで見る者に納得させる。激情にまかせて余りにも多くのヒトを殺戮したことに気付いて愕然とした平三郎が、自らの手から刀をもぎ取って捕手の縛に付くシ−ンは、前半の類型的な筋立ての粗っぽさを補って余りある感動を与えるものである。呑気呆亭