10月29日(水)「パリは燃えているか」

パリは燃えているか」('66仏=米)監督:ルネ・クレマン 原作:ラリ−・コリンズ/ドミニク・ラビエ−ル 脚本:フランシス・フォ−ド・コッポラ/ゴア・ヴィダル 撮影:マルセル・グリニヨン 音楽:モ−リス・ジャ−ル 出演:ジャン=ポ−ル・ベルモンド/シュルル・ボワイエ/グレン・フォ−ド/アラン・ドロン/カ−ク・ダグラス/ゲルト・フレ−ベ/オ−ソン・ウエルズ/イヴ・モンタン/シモ−ヌ・シニョレ
★「史上最大の作戦」以降隆盛を極めた戦争大作の1本。第二次大戦中、独軍占領下のパリを舞台に、連合軍によるパリ解放に至る過程と、その裏で繰り広げられた大戦秘話をオールスター・キャストで描いた作品である。物語の主軸は、パリ郊外に迫る連合軍の進撃を阻止するためにヒトラーが立案した、“パリ焦土化計画”と、これを食い止めようとするレジスタンスたちの熾烈な攻防戦。これに連合軍の侵攻の過程が刻々と挿入され、クライマックスはパリの大市街戦へとなだれ込んでいく。多くの出演者の中では、若いレジスタンスを演じたベルモンドと、戦車隊の指揮官を演じたY・モンタンが出色の出来。脚本をライター時代のF・コッポラが担当しており、場面展開に非凡なものが感じられるが、後の本人のコメントによれば“あまり気に入っていない”との事。<allcinema>

◎こうしたドキメンタリ−タッチの映画に有名俳優を起用するのは如何なものか。モンタンは悪くなかったがベルモンドもドロンも格好良すぎて浮いていた。シモ−ヌ・シニョレはさすがにカフェのマダムをいかにもそれらしく演じていた。英語版で観たのでフランス側の俳優さんたちの登場に特に違和感を感じ、その分アメリカ側の俳優さんたちには違和感がなかったが、興行的な配慮もあったのだろうがこれほどの映画なのだからオ−ルスタ−を起用する必要はなかったのではないだろうか。有名なのかどうかは知らないがパリを救うために前線を突破して将軍たちにパリへの進軍を“もしパリが破壊されたらフランスは連合軍を決して許さないだろう”と説くガロア少佐役ピエール・ヴァネックのエピソ−ドが心を打ち、パリを破壊することをためらうドイツ軍司令官コルティッツ役のゲルト・フレ−ベルが好演。何よりもこの映画はパリを守ったレジスタンスを誇りに思うフランスの人々にとって、我々連合国の進軍に何のレジスタンスの試みもしなかった日本人には抱くことの出来ない誇らしさを与えているように思えて羨ましく思った。破壊されるかもしれないパリの市街をハラハラ危ぶみながら少しも飽きずに観ることが出来た。フランス国民にとっては「映像遺産」となるだろうと思われるほどの傑作。呑気呆亭

10月30日(木)「アメリカの影」

アメリカの影」('60・米)製作:モ−リス・マッケンドリ−/シ−モア・カッセル 監督:ジョン・カサベテス 撮影:エリック・コルマ− 音楽:チャ−ルズ・ミンガス 出演:レリア・ゴルド−ニ/ヒュ−・ハ−ド/ベン・カ−ルザ−ス/アンソニ−・レイ/ルパ−ト・クロセ−
★ マンハッタンに暮らす、黒人の血を引いた、ヒュー、レリア、ベンの三人の兄妹。彼らが白人社会の中で、それぞれに肌の色からくる疎外を体験していく様を描く。「特攻大作戦」や「ローズマリーの赤ちゃん」の個性派俳優で、後には“ニューヨーク・インディペンデントの父”と呼ばれる事になる“映画監督”J・カサヴェテスの初めての作品。シナリオなしのアドリブ演出で、ある種セミドキュメンタリー的な色合いがあり、そのリアリティと臨場感は映画の新たな方向性を確かに見据えていた。C・ミンガスの音楽も雰囲気だ。<allcinema>

◎ヒューはまさに黒人、レリアとベンは一見して黒人には見えない。レリアを好きになった白人の男が、彼らのアパ−トでレリアに“兄よ”といってヒュ−たちを紹介されたときに受けた衝撃は、我々観客にも同じリアルなショックを与えたのだった。売れない歌手のヒュ−、町の与太者のベン、魅力溢れるレリア、それぞれが街で繰り広げる物語を即興的にキャメラが追ってそこはかとないユ−モアを漂わせ、その映像に被ってくるジャズが心地良く街の景色を彩る。呑気呆亭

10月31日(金)「エル・ドラド」

エル・ドラド」(66・米)監督:ハワ−ド・ホ−クス 原作:ハリ−・ピ−タ−・ブラウン 脚本:リ−・ブラケット 撮影:ハロルド・ロッスン 音楽:ネルソン・リドル 出演:ジョン・ウエイン/ロバ−ト・ミッチャム/ジェ−ムズ・カ−ン/ア−サ−・ハニカット
★テキサスのエル・ドラドを久々に訪れたガンマンのコール。彼は水の利権を巡って係争中である牧場主ジェイソンの救援にやって来たのだった。しかし、旧友のハラーが保安官だと知り、手を引くことに。だが、それを知らないジェイソンの係争相手であるマクドナルドの娘に襲われ、傷を負ってしまう。すると、今度はジェイソン一味にマクドナルドの息子が捕らえられ、交渉の切り札にされる。こうしてエル・ドラドは決戦の場と化し、コールとハラーたちはマクドナルド側を救援、激しい銃撃戦が繰り広げられるのだが…。
テキサスを舞台に、J・ウェイン扮する名ガンマンと、R・ミッチャムの保安官がコンビを組んで、悪辣な牧場主と対決するウェスタン。二人に協力する青年役にJ・カーン。ホークス西部劇の中でもぐっと通俗的な造りでアクション主体と言っていい作品だが、だからこそ痛快。ウェイン、ミッチャムのコンビぶりもご機嫌で、娯楽西部劇としては文句のつけようがない。
<allcinema>

◎'59年の同じ監督作の「リオ・ブラボ−」に比べると物語にコクがないのは、名脇役ウォルタ−・ブレナンの存在の有無によるだろう。唯一エピソ−ドとして面白いのは酒浸りの保安官を覚醒させるためにジェ−ムズ・カ−ンの処方によって調合するインディアンの怪しげな薬を飲まされたときのロバ−ト・ミッチャムのビクンと反り上がる身体の反応であった。ガンプレイとしてはそれほど面白いモノはなく、「リオ・ブラボ−」の“ライフルと愛馬”の斉唱の楽しさや“皆殺しの歌”の緊迫感もない普通の西部劇でありました。呑気呆亭