5月8日(金)「阿部一族」

阿部一族」('95・フジTV)監督:深作欣二 原作:森鴎外 脚本:古田求 音楽:長生淳 語り:中村吉右衛門 出演:山崎努/佐藤浩市/蟹江敬三/藤真利子/渡辺美佐子/石橋蓮司/真田広之
★肥後の藩主である細川忠利が逝去し十八人もの家臣たちが殉死した。家臣の一人である阿部弥一右衛門も忠利の生前に殉死を願い出たが、許されずに生き延びていた。家中の者たちは陰で弥一右衛門を責め立て、ついに彼は家族の前で切腹自殺を図った。身分を落とされた弥一右衛門の長男・権兵衛は、忠利一周忌の席上で断髪し墓前に供えるが、縛り首の刑に処せられてしまう。これを不服とした阿部一族は、廷内に立てこもるのだったが…。
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阿部一族の面々を演じた豪華版の出演者はそれぞれ力演していたのだが、物語が余りにも悲劇的であるだけに重苦しくなってしまって、その一族をそっと傍らから見守る隣家の主人を演じた真田広之の存在がその重苦しさを救ってくれた。武芸の稽古では甲乙付けがたい好敵手である佐藤浩市を他人の手に掛けさせまいとして彼は槍を引っ提げて阿部家に踏み込むのだが、その前に妻の藤真利子に隣家の幼子たちへの手向けとして玩具と菓子を届けさせる。その心遣いの優しさと、槍を執っての佐藤浩市との立ち回りの凄まじさの対比が見事で、TV映画とはいえ見応えのある作品になっていた。呑気呆亭