2月27日(木)「眠狂四郎・勝負」

眠狂四郎・勝負」('64・大映)監督:三隅研次 原作:柴田錬三郎 脚本:星川清司 撮影:牧浦地志 音楽:斎藤一郎 出演:市川雷蔵/加藤嘉/藤村志保/高田美和/久保菜穂子/成田純一郎/丹波又三郎/五味龍太郎/須賀不二男/浅野進治觔
★シリ−ズの実質的な出発点となった秀作。名匠・三隅研次の演出により風格ある仕上りをみせている。ある年の正月、狂四郎が偶然知り合った老人は幕政改革に燃える勘定奉行だった。彼は、将軍の子・高姫の御化粧代二万両を支給停止にするなどの政策で、幕府の特権階級やその取り巻きから命を狙われていた老人の人柄にひかれた狂四郎は、彼の命を守るため高姫の一味と切り結ぶ。謎の女に操られた刺客たちとの決闘、柳生但馬守との御前試合など見せ場も数多い。また二八そば屋の呼び声や正月の風物などの江戸情緒が詩情を添える。狂四郎の人物像はより虚無的になり、もはや、いささか一徹なかの老人にしか心を開かない。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎老人加藤嘉との出会いのきっかけが、天涯孤独な尻押しの少年を廻ってのエピソ−ドであったり、江戸の町の正月の風物が丁寧に描かれていて、チャンバラ物でありながら殺伐さがない。高田美和の二八そば屋の呼び声“鍋や―きうどん・・・”はいつまでも胸の底に残る響きであった。藤村志保も相変わらず美しく、久保菜穂子のなまめかしさも嬉しい見物であった。呑気呆亭