2月11日(火)「日本侠客伝」

「日本侠客伝」('64・東映)監督:マキノ雅弘 脚本:笠原和夫/野上龍雄/村尾昭 撮影:三木滋人 美術:鈴木孝俊 音楽:斎藤一郎 出演:高倉健/中村錦之助/藤純子/南田洋子/長門祐之/三田佳子/田村高広/品川隆二/大木実/安部徹
★後に「仁義なき戦い」を手がける笠原和夫と「博徒」の村尾昭によるオリジナル脚本をもとに「次郎長三国志」のマキノ雅弘が監督した任侠もの。高倉健中村錦之助との共演が人気を呼んだ本作はシリーズ化され全十一本が製作された。
深川で運送業を営む木場政組は、ライバルである沖山運送の妨害工作に悩まされていた。争いを好まぬ木場政が病死したことから、沖山運送はますます勢力を伸ばしていく。除隊し組に帰ってきた辰巳の長吉は、組が小さくなっていくことに心を痛める。木場政の子分である赤電車の鉄が、沖山兄弟の手により殺害される事件が発生するが、沖山はすでに警察署長や代議士を抱えていた。木場政に恩義のある客分の清治は、日に日にエスカレートする沖山運送の営業妨害を許すことができず、一人で沖山組に殴り込みをかけるが、逆に返り討ちに遭ってしまう。<allcinema>

マキノ雅弘の語るところによれば、この映画は当初中村錦之助主演で企画されたらしいが、彼のスケジュ−ルが空かないので当時錦之助が目を掛けていた高倉健を主演に据えたのだという。それまでどっち付かずの役柄を演じてぱっとしなかった高倉がマキノ雅弘という名伯楽によって化けたのがこの映画からだったようだ。確かにこの作品の高倉の演技には変に頬を歪めたりするぎこちなさが目立っているが、それを突き抜けるキャラクタ−の誕生を我々はここに見ることが出来る。錦之助裕次郎に続く第三の戦後ス−パ−・スタ−の登場である。彼ら三人こそが戦前の大スタ−たちに代って戦後という新時代を背負って、それぞれがその身体性とエロキュ−ションによって、三者三様にキャラクタ−の異なる典型を映画史に刻んだのであった。
映画的にはラストの祭りの賑わいを利用した殴り込みのシ−ンが、マキノらしく洒落た演出であることが嬉しかった。呑気呆亭