1月24日(木)「無防備都市」

無防備都市」(45・伊)監督:ロベルト・ロッセリ−ニ 脚本:セルジオ・アミディ/フェデリコ・フェリ−ニ 撮影:ウバルト・アラ−タ 音楽:レンツオ・ロッセリ−ニ 出演:アルド・ファブリ−ツイ/アンナ・マニャ−ニ/マルチェロ・パリエーロ/マリア・ミーキ
★今みても大変衝撃的な、ロッセリーニによるレジスタンス劇である。42年のローマ。国民解放会議の指導者マンフレディ(マルチェロ・パリエーロ)は名を変え、市井に潜っていたが、めざといナチ高官に恋人の女優マリーナ(マリア・ミーキ)と写った写真から正体を探られ、同志の印刷工フランチェスコの下宿に逃げ込む。彼は隣室の戦争未亡人ピーナ(マニアーニ)との結婚を控えていた。子連れで再婚するピーナは期待と不安でいっぱいだ。マンフレディは闘争資金調達に回らねばならなかったが、身動きが取れず、神父ドン・ピエトロ(ファブリッツィ)に連絡係を頼み、金の入金に成功。そして、ピーナたちの結婚式の日、ナチ・ゲシュタポに襲われたマンフレディは逃げるが、フランチェスコらは逮捕され、その護送車を追ったピーナは撃ち殺される。ここまでが第一部。そして二部--。護送車はパルチザン同志の襲撃に遭い、フランチェスコは解放され、マンフレディと合流してマリーナのアパートを頼るが、彼女はナチの婦人隊員に金と物資、加えて麻薬で縛られ(同性愛を暗示する場面があるが、マリーナを演じたM・ミーキにそれだけの役柄をこなす力量がなく、この辺が空転して作品を損ねてもいる)、彼らは訣別。神父の手引きで更に隠れ家に逃れる途中、マリーナの裏切りでマンフレディは神父と共にナチに拘束され、神父の目前で酷い拷問にあうが、遂に一切口を割らずに絶命。“共産シンパ”となじられた神父も、“悪魔と闘うのに信仰は関係ない”と吐き棄て、刑場の露と消えるのである。このラスト、金網越しに少年たちに見守られながらの処刑シーンは現代のゴルゴダの丘を想わせる素晴らしさで、絶望してその場を去る少年たちの肩を落とした姿が忘れられない。原作はS・アミディでフェリーニと共同で脚本も書いている。<allcinema>

◎ドイツの同盟国であったイタリアに反独レジスタンスの組織があったことをこの映画によって教えられた。そのことを民族の歴史記憶として残しておこうとの志によってこの作品は作られたのだろう。製作されたのは連合国によってロ−マは解放されたがまだ北部イタリアでは戦闘が続いていた時期であったと聞く。同じ年に連合軍に原爆をニ発落されて征服された我国に、遂に何処にもパルチザンの発生の契機さえなかったことを思えば、過去二千年の戦闘を繰返してきたヨ−ロッパという民族と宗教のルツボに生きて来た人々に受け継がれてきたレジスタンスへの遺伝子というものを思わざるを得ない。その遺伝子は信義を守って刑場に散った神父の処刑の様を見守った少年たちに確実に受け継がれて行くのだろう。そこにこそこの映画を作った人々の想いも有ったに違いない。呑気呆亭