9月29日(土)「霧の波止場」

「霧の波止場」('38・仏)監督:マルセル・カルネ 脚本:ジャック・プレベ−ル 出演:ジャン・ギャバン/ミシェル・モルガン/ミシェル・シモン
★港町ル・ア−ブル。外人部隊を脱走したジャンは、身を隠した酒場で会ったネリ−(モルガン)と親しくなり、やがて愛し合うようになるが……。人生にいや気のさした男女が愛し合い、引き裂かれる運命を描いたカルネ=プレベ−ルのコンビによる詩的リアリズムの代表作。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎プロロ−グ、乗せてもらったトラックのヘッドライトの灯りの中を横切る白い影を見て運転手のハンドルを引っ手繰ってその命を救おうとするジャン。怒った運転手とのやり取り、ここにジャンという人物を暗示するカルネ=プレベ−ルのコンビの巧みさがある。その命を救われた白い影の犬がそれ以後終始ジャンにつきまとう様は、昨年(2011)のアカデミ−賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督の映画「ア−ティスト」の名犬アギ−に受け継がれている。そしてル・ア−ブルの浜辺に立つ怪しげな酒場とそこにたむろするウロンな人物たち。映画を観る楽しみを巧みに組上げて行くカルネ=プレベ−ル。極め付けはミシェル・モルガンのはかなげな美と養父ミシェル・シモンの愛情と邪心の葛藤。ジャン・ギャバンとその愛犬はまるでル・ア−ブルという決して霧の霽れることのない街を徘徊する狂言回しのようだ。呑気呆亭