9月4日(火)「破れ太鼓」

「破れ太鼓」('49・松竹京都)監督・脚本:木下恵介 音楽:木下忠司 出演:坂東妻三郎/村瀬幸子/森雅之/小林トシ子/大泉滉/木下忠司
★軍平(バンツマ)は無教養で傲慢な、やや時代錯誤的な暴君だった。こんな軍平と家族が繰り広げる木下恵介得意のユーモア喜劇である。親父を諷刺した「破れ太鼓」を大声で唄いまくる音楽家志望の次男を木下の実弟・木下忠司が演じている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎坂東妻三郎も好演しているが、それ以上にカミサン役を演じた村瀬幸子がいい。夫の横暴に耐えかねて遂に怒りを爆発させ、夫の十八番のクセの右手を上げる「ハイル!」の仕草を思わずやってしまう場面は爆笑モノである。次男を演じた木下忠司の台詞がいい、「六人の子どもを順繰りに可愛がって、日曜日にはお母さんと仲良くするといい」。軍平が家族みんなに背かれてこれまで奮闘してきた人生を振り返りながら、涙と共に唯一の好物のカレーライスを呑み込むシーンは、「涙と共にパンを呑み込んだ経験のない人とは話が出来ない」というような意味のことを言ったフランスの女性哲学者(名前は失念)の言葉を思い出さされてしまったのだった。呑気呆亭