11月25日(水)「愛と哀しみの果て」

愛と哀しみの果て」('85・米)製作・監督:シドニ−・ポラック 原作:アイザック・ディネ−セン 脚本:カ−ト・リュ−ドック 撮影:デビッド・ワトキン 音楽:ジョン・バリ− 出演:ロバ−ト・レッドフォ−ド/メリル・ストリープ/クラウス・マリア・ブランダウワ−/マイケル・キッチン/マリック・ボ−ウエンズ
★20世紀初頭のアフリカを舞台に、愛と冒険に生きたひとりの女の半生を描いた一大ロマンス。スウェーデン貴族と結婚し、ケニアに渡って来たデンマーク人の令嬢カレン。だがそこには幸せな結婚生活は無く、農場経営も思うように進まない。そんな彼女の前にサファリのガイドを務めている冒険家が現れた…。波乱万丈のストーリー、アフリカの雄大な景観、ストリープとブランダウアーの丁々発止の演技合戦と見どころは多いが、あまりにも上映時間が長すぎる。アカデミー作品・監督・脚本・撮影・作曲・美術・音響と主だった部門を独占した作品ではあるものの、時として冗漫な語り口は万人向けとは言い難い。<allcinema>

◎確かに長かったが決して退屈はしなかった。観終えてこれほどに爽やかな気持ちになる映画というものも珍しい。それが何に由来するかと考えて思い当たったのは、登場する人物たちが誰も類型として描かれていないということではないかということだった。それは下世話に言えば三角関係を形成するカレン(ストリープ)、ブロア(ブランダウワ−)、デニス(レッドフォ−ド)の三人だけではなく、彼らの友人のコ−ル(キッチン)にしても、カレンの執事役のアフリカンにしても、部落の長老、若者、デニスの相棒で台詞一つないのに印象的な存在のマサイの戦士、そして物語の始めでは女性であることから入室を拒否しながら、独り敢闘・破産してアフリカを去ろうとするカレンの潔さに敬意を表して、“一杯飲りませんか?”と誘う社交クラブの面々のフェアなスマ−トさ、そしてデニスの墓に詣でる雌雄のライオンに至るまで、心に深々と染み入るように描かれている。素晴らしい映像でアフリカの景色を捉えて見せてくれたキャメラ、モ−ツアルトを効果的に使った音楽、そしてモチロン、カ−ト・リュ−ドックの脚本とシドニ−・ポラックの演出。何度観ても初めて見るような思いにさせてくれる作品である。呑気呆亭